ウィリアムズ症候群:遺伝子型から認知表現型へ



Williams syndrome: From genotype through to the cognitive phenotype.

Donnai D, Karmiloff-Smith A
Am J Med Genet 2000 Feb;97(2):164-171

ウィリアムズ症候群は、7q11.23部位にある一連の遺伝子が欠失することによって引き起こ され、独特の顔貌・循環器系の異常・乳児期高カルシウム血症・発育及び発達遅延を引き 起こす。欠失の大きさはおよそ1.5Mbで、17種類程度の遺伝子を含んでいる。遺伝子及び 偽遺伝子を含む大きな反復配列が欠失のプレークポイントに隣接しており、減数分裂の不 等組換えが共通的な突然変異発生のメカニズムだと考えられている。エラスチン遺伝子の 半接合が大動脈弁上狭窄などの循環器系狭窄に関連している。LIMキナーゼ1の半接合は独 特の認知プロフィールに関連している可能性がある。その他の欠失遺伝子と表現型徴候と の関連は明らかになっていない。ウィリアムズ症候群を持つ人はひとなつっこすぎると同 時に不安感を持ち、社会的に適切な判断ができない傾向がある。認知能力と言語能力が一 致せず軽度から重度の精神遅滞を呈する。外部から観察された行動を通して精神処理過程 を分析した結果から得られた認知表現型の分析によって、正常な人とウイリアムズ症候群 の人の違いが明らかになった。ただし、顔認識など、ウイリアムズ症候群の被験者がほぼ 普通の成績を収める分野もある。7q11.23部位の欠失サイズが小さく、エラスチン遺伝子と LIMキナーゼ1だけを含んでいる患者の認知能力分析は異なる結果を示しており、まだ遺伝 子型と認知表現型の相関を決定できうる状況ではない。

(2001年3月)



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