ウィリアムズ症候群の臨床と遺伝子。ウィリアムズ症候群の疑いがある44人の患者の臨床及び分子遺伝的研究
Clinical aspects and genetics of Williams-Beuren syndrome. Clinical and molecular genetic study of 44 patients with suspected Williams-Beuren syndrome
von Beust G, Laccone FA, del Pilar Andrino M, Wessel A
Institut fur Humangenetik, Universitat Gottingen.
Klin Padiatr 2000 Nov-Dec;212(6):299-307
背景:
臨床的症状のばらつきが大きい遅滞症候群であるウィリアムズ症候群の診断の可能性を
疑った場合、臨床症状と分子遺伝分析や分子細胞遺伝分析と臨床症状を比較する。7番染
色体のエラスチン遺伝子領域の微少欠失に関する遺伝子分析結果と臨床症状を突き合わ
せる。欠失の有無によって症状に違いが見られるであろうか? 分子遺伝分析や分子細胞
遺伝分析の有益性はどの程度あるのか?
患者及び手法:
ウィリアムズ症候群の疑いが持たれている患者44人に対して分子遺伝分析及び分子細胞
遺伝分析を使って検査を行った。心臓疾患・異形徴候・珍しい神経行動特徴などの一般
的臨床症状が臨床検査時点で標準的質問状によって確認された。患者とその両親のDN
Aゲノムをマイクロサテライトマーカーを使って分析した。マイクロサテライト分析が
有効ではなかったような一部のケースでは、エラスチン遺伝子プローブによるFISH分析
と伝統的な染色体バンド分析を実施した。
結果:
患者15人に微少欠失が見られた。4人の患者は父親由来の染色体に欠失があり、7人の
患者は母親由来の染色体に欠失が見られた。多型性にはあまり差が見られない。マイク
ロサテライト分析によって欠失側染色体の由来が父親なのか母親なのかが判定できない
例が2例存在した。マイクロサテライト分析が有効でなかった2例についてFISH分析を
実施した。全FISH分析実施例で有益な結果が得られた。染色体7q11.23領域に欠失を持
つ子どもの80%が典型的な異形徴候を示し、70%はウィリアムズ症候群の典型的行動パタ
ーンを有し、50%は特定の心臓疾患を持つ。対照的に、染色体の微少欠失を持たない子ど
ものグループでは、典型的な異形徴候は30%〜40%にしか見られず、典型的な心臓疾患は
10%、行動的変化が見られた患者は皆無であった。欠失の由来が父親か母親かと特定の
徴候との間の関連は見られなかった。FISH分析と伝統的な染色体バンド分析を組み合わ
せると、診断に非常に有効である。これらの結果を過去の文献のデータと比較した。
結論:
発達遅滞を呈し、ウィリアムズ症候群様の異形徴候と珍しい行動特徴を有する子どもた
ちには、分子細胞学的FISH検査を実施すべきである。7q11.23領域に欠失が発見された
場合は、特定の循環器検査を受けることを勧める。
(2001年6月)
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