遅筋特異的転写に関するDNA配列の分子精査と要因



Molecular dissection of DNA sequences and factors involved in slow muscle-specific transcription.

Calvo S, Vullhorst D, Venepally P, Cheng J, Karavanova I, Buonanno A.
Section on Molecular Neurobiology, National Institute of Child Health and Human Development, National Institutes of Health, Bethesda, Maryland 20892.
Mol Cell Biol 2001 Dec;21(24):8490-503

転写は遅筋および速筋の単収縮筋繊維(slow- and fast-twitch myofibers)の発生におけ る主要な調節手段である。我々はこれまでにスローTnI遺伝子の上流領域(遅筋上流部調節 要素:slow upstream regulatory element [SURE])と、ファーストTnI遺伝子のイントロ ン領域(速筋イントロン部節要素:fast intronic regulatory element [FIRE])を同定し、 それらがトランスジェニックマウスにおいて筋繊維に特異的に転写されることを確認した。 今回は、E BoxやNFTA・MEF-2TnI・CACCモティーフを含むSUREの下流側半分が、トランス ジェニックマウスにおいて骨格筋全般で特異的に発現することに貢献していることを示し た。しかし、SUREの上流側とFIREは、それぞれ遅筋および速筋繊維に特異的である。全骨 格筋特異的エンハンサーにSUREの上流領域を追加することで、遅筋特異性に必要となる15 塩基対からなる領域を特定した。この配列を酵母菌の単ハイブリッド(one-hybrid)スクリ ーンに適用することで、プロテイン1(protein 1 (MusTRD1))を含む基本転写因子3(GTF3) と筋肉TFII-Iのリピートドメインの相補DNAを単離した。GTF3は複数ドメインからなる核 タンパク質であり、イニシエータ要素結合転写制御因子TFII-I と関連している。両タンパ ク質をコードするこれらの遺伝子は、しばしば筋力の低下を示すウィリアムズ症候群の患 者で欠失している。ゲル遅延測定法(gel retardation assays)によって、GTF3の全長は、 カルボキシル基端側の半分と同じように、SUREのバイコイド様モティーフ(bicoid-like motif)(GTTAATCCG)に特異的に結合することが明らかになった。GTF3の発現は筋肉にも筋 繊維のタイプにも特異的ではない。発現レベルは胎児発達期にで特定の筋繊維タイプの発 生時期と一致して最大になり、ブピバカイン(bupivacaine:訳者注=局所麻酔薬)によっ てダメージを受けた筋肉を再生成する際にも一時的にレベルが上がる。さらに、電気穿孔 (electroporated)された成人のヒラメ筋においてはGTF3の過剰発現によってTnI SURE による転写が抑制されることも明らかにした。これらの結果は、初期の筋肉発達段階にお いてGTF3の役割がスロー TnI発現の調節であることを示す可能性があり、ウィリアムズ症 候群への寄与を示唆している。

(2001年11月)



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