t(7;16)(q11.23;q13)均衡転移でエラスチン遺伝子が分断された家系では様々なウィリアムズ症候群の表現型が見られる



The elastin gene is disrupted in a family with a balanced translocation t(7;16)(q11.23;q13) associated with a variable expression of the Williams-Beuren syndrome.

Duba HC, Doll A, Neyer M, Erdel M, Mann C, Hammerer I, Utermann G, Grzeschik KH.
Institut fur Medizinische Biologie und Humangenetik der Universitat Innsbruck, A-6020 Innsbruck, Austria.
Eur J Hum Genet 2002 Jun;10(6):351-61

ウィリアムズ症候群は、大動脈弁上狭窄・いわゆる妖精様顔貌・しわがれた声・特定の認知様式など多方面に症状が現れる複合発達障害である。大部分のウィリアムズ症候群患者は7番染色体の片側q11の位置で1Mbを超える大きさの欠失がある。循環器系の異常の原因になっているエラスチン遺伝子を除いて、この欠失部位にある遺伝子が表現型に与える影響は不明である。細胞遺伝学的な均衡転移t(7;16)(q11.23;q13)を持った家系を調査した結果、均衡転移を持っている患者は、しわがれ声だけしか症状が無い人からウィリアムズ症候群の表現型全てを持っている人まで幅広い臨床表現型が見られた。転移ブレークポイントの分子細胞遺伝的分析やDNAシーケンス分析の結果、全転移患者に共通してエラスチン遺伝子のイントロン5における細胞遺伝的組替えの結果エラスチン遺伝子が分断されていた。この家系には最近報告された7q11.23領域の大規模な逆位は見られなかった。我々の調査結果は、転移によりエラスチン遺伝子が分断されることで、典型的なウィリアムズ症候群・非典型的なウィリアムズ症候群・大動脈弁上狭窄・表現型がひとつも見られない例があることを示しており、ヒトにおける位置効果(position effect)により表現型が非常に多様化することの明確な事例になっている。

(2002年9月)



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