ウィリアムズ症候群における欠失発生を引き起こす突然変異の機構



Mutational Mechanisms of Williams-Beuren Syndrome Deletions.

Bayes M, Magano LF, Rivera N, Flores R, A Perez Jurado L.
Unitat de Genetica, Departament Ciencies Experimentals i de la Salut, Universitat Pompeu Fabra, Barcelona, Spain.
Am J Hum Genet. 2003 Jun 9 [Epub ahead of print].

ウィリアムズ症候群は7q11.23領域にあり連続する遺伝子群の片側が欠失することによっておこる分節欠乏症候群(a segmental aneusomy syndrome)である。それぞれ異なるブロックから構成される3個(A,B,C)の巨大な領域特異的な低コピー反復要素(region-specific low-copy repeat elements (LCRs))がウィリアムズ症候群欠失領域区間に隣接して存在し、この要素が誤整列と不等交差を起こしやすくし、結果として欠失を発生させていると考えられる。本研究では、74人のウィリアムズ症候群患者(その内、30人は正確な欠失位置が決定されている)に対して、LCR特異的な核酸配列の違いを使って、正確な欠失の大きさとLCRコピーサイズを決定した。ほとんど(95%)の患者はブロックBコピーの動原体側と中央の間における組替えを原因とする1.55Mbの欠失を有していた。両者は105-143kbの配列に沿っておよそ99.6%の塩基が一致している。このケースでは欠失が発生するブレークポイントは組換体であるブロックB内部の数カ所にマップされるが、GTF2I/GTF2IP1遺伝子内部の12kb領域での発生が多く(27%以上)観察される。転移前駆体(transmitting progenitors)のおよそ3分の1(28%)は、LCRの動原体側とテロメア側が逆位になった異型接合でることが判明した。ブロックBの末端部38kbに逆位を有している患者において、欠失のブレークポイントはすべてテロメア側及び中央部のコピー領域に存在する。最後に、ブロックAコピーの動原体側と中央の間で組換えが起こった大きな欠失(およそ1.84Mb)を有する患者は4人(5%)だけである。特異的な対合形成と正確な異型組替えが、ウィリアムズ症候群における逆位と欠失を含むこの領域で発生している生殖系列の異なる組替えにつながっているというモデルを提案する。7q11.23領域における染色体の不安定性はこの領域のゲノム構造に直接関係している。

(2003年6月)



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