新しい染色体構造調節因子複合体とある種の遺伝疾患との関連の解明に成功



ウィリアムズ症候群で欠失している遺伝子に関する研究発表がありました。科学技術振興事業団のニュースリリース記事と、Cellに投稿された論文の要約を紹介します。

(2003年7月)

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The Chromatin-Remodeling Complex WINAC Targets a Nuclear Receptor to Promoters and Is Impaired in Williams Syndrome.

北川 浩史, 藤木 亮次, Yoshimura K, Mezaki Y, Uematsu Y, Matsui D, 小川 智子, Unno K, Okubo M, 時田 章史, Nakagawa T, 伊藤 敬, Ishimi Y, Nagasawa H, 松本 俊夫, 柳沢 純, 加藤 茂明.
Institute of Molecular and Cellular Biosciences, University of Tokyo, 1-1-1 Yayoi, Bunkyo-ku, 113-0032, Tokyo, Japan
Cell. 2003 Jun 27;113(7):905-17

ビタミンDレセプター(VDR)に直接応答し、ウィリアムズ症候群転写因子に含まれているヒト多タンパク質複合体 (WINAC)を同定した。WINACはATPの存在下で染色体構造を変化させる機能を持ち、SWI/SNF因子とDNA複製因子の両方を含んでいる。後者はWINACが正常なSフェーズ進行に関わっていることを示唆している。WINACはリガンドが結合していない(unliganded)をプロモーター領域に存在するVDRの目的領域に集める機能を担っている。一方で、後続する協調調節因子の結合にはリガンドの結合が必要となる。この動員順序は、配列特異的調節因子が染色体構造調節複合体と結合して、特定領域に存在するヌクレオソーム配列を調整して協調調節因子と結合できるようにコントロールしていることの一例である。さらに、ウィリアムズ症候群患者の培養細胞においてWSTFを過剰に発現させることで、ビタミンDレセプターがビタミンD調節プロモーターに結合する機能を回復させた。この結果ウィリアムス病発症の一因はWINACの機能不全、すなわち染色体構造調節因子複合体機能不全であると考えられる。

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論文不正のためCELL誌に投稿された本論文は2012年3月30日に撤回されています。詳細は東京大学の「分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告(最終)」(2014年12月26日付)を参照してください。

(2015年1月)



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