ウィリアムズ症候群における精神遅滞と関連するGTF2I半接合:ウィリアムズ症候群領域に欠失を有する5家族に対する遺伝子型−表現型分析



GTF2I hemizygosity implicated in mental retardation in Williams syndrome: Genotype-phenotype analysis of five families with deletions in the Williams syndrome region.

Morris CA, Mervis CB, Hobart HH, Gregg RG, Bertrand J, Ensing GJ, Sommer A, Moore CA, Hopkin RJ, Spallone PA, Keating MT, Osborne L, Kimberley KW, Stock AD.
Department of Pediatrics, Division of Genetics, University of Nevada School of Medicine, Las Vegas, Nevada.
Am J Med Genet. 2003 Nov 15;123A(1):45-59.

ウィリアムズ症候群の患者の大半は7q11.23の位置にエラスチン遺伝子(ELN)を包含する形で1.6Mbにおよぶ欠失がある一方で、常染色体優性遺伝する大動脈弁上狭窄症の家系はELNに点突然変異がある。両者の臨床表現型で重なる部分(循環器系疾患やヘルニアのような結合組織の異常)はELNのハプロ不全の影響である。大動脈弁上狭窄症の家系では、特に乳児の頃にウィリアムズ症候群の顔貌特徴のいくつかを呈しすることが多く、ELNが顔の特徴に影響を与えていることも示唆している。他の遺伝子のがウィリアムズ症候群表現型に与える影響を発見するために、ウィリアムズ症候群領域に小さな欠失を有する大動脈弁上狭窄症の5家系を調査した。精神遅滞を呈する家族はないが、欠失を有する家族はウィリアムズ症候群様の認知プロフィール(Williams Syndrome Cognitive Profile (WSCP))を有する。家系全員が、脳で強く発現しているタンパク質をコードするLINK1の欠失を共有しており、LIMK1の半接合が視空間認知異常に影響を与えているという仮説を支持している。この家系はウィリアムズ症候群領域の範囲に欠失を有しているが、FKBP6あるいはGTF2Iは欠失していないことから、ウィリアムズ症候群に見られる精神遅滞はこの領域の中央側あるいは端部側に存在する欠失の影響を受けていると思われる。この5家系とウィリアムズ症候群で小さな欠失領域を有する患者の報告を比較することによって、ウィリアムズ症候群の精神遅滞はGTF2Iの影響が最も大きいことが判明した。

(2003年11月)



目次に戻る