先天性心疾患の遺伝相談
小崎 里華、奥山 虎之
国立成育医療センター遺伝診療科
循環器科、56(2)、2004年8月、174-180ページ
略
4. Williams症候群
原因:
7番染色体長腕(7q11.23)の微細欠失によって生じる隣接遺伝子症候群である。
頻度:
10,000〜20,000人に1人。ほとんどは新生突然変異である。
症状:
80%近くに心疾患(大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄、肺動脈弁狭窄、心室中隔欠損症など)を合併する。特異顔貌(elfin-like)、腎血管障害、精神運動発達遅滞、視空間認知障害、鼠径ヘルニア、かすれ声などさまざまな症状を呈する。欠失領域内にあるELN遺伝子、LIMK1遺伝子などが症状に関わっている。
診断:
染色体検査(FISH)により、7q11.23領域の欠失を認める。
遺伝:
常染色体優性遺伝様式をとる。大部分の症例で新生突然変異であり罹患者の両親の次子における再罹患率は低い。
略
分子遺伝学の進歩により、遺伝子診断可能な疾患が増加している。遺伝学的検査をを行う際には「遺伝学的検査に関するガイドライン」(遺伝医学関連10学会による提案)を遵守する。とくに遺伝子検査の結果が、本人だけではなく家族や血縁者に影響を与えること、遺伝学的情報が秘匿すべき個人情報であることに留意する。
国立成育医療センターでは、遺伝性疾患の診断を目的とする遺伝子検査の実施を遺伝診療科が管理統括している。すなわち、施設内で遺伝子検査を実施する場合も、施設外に依頼する場合も、各科主治医は遺伝診療科医師(臨床遺伝専門医)に、@インフォームド・コンセントの実施と検査前カウンセリング、A試料の匿名化(連結可能匿名化)、B遺伝子検査結果の説明とカウンセリングを依頼するように院内規約を定めている。
これまで遺伝子診断の研究的側面のみが強調されてきたが、検査の結果は患者・家族にとって重要な臨床情報となりうることを認識し、これを診療に役立てるという心構えが必要である。
(2006年4月)
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