成人患者の先天性僧帽弁逆流症:発生頻度が低く誤診されやすいが修復可能な弁の疾患
Congenital mitral valve regurgitation in adult patients. A rare, often misdiagnosed but repairable, valve disease.
Zegdi R, Amahzoune B, Ladjali M, Sleilaty G, Jouan J, Latremouille C, Deloche A, Fabiani JN.
AP-HP, Assistance Publique - Hopitaux de Paris, Service de Chirurgie Cardiovasculaire, Hopital Europeen Georges Pompidou, Paris, France; Universite Rene Descartes, Paris V, France.
Eur J Cardiothorac Surg. 2008 Aug 28. [Epub ahead of print]
目的:先天性僧帽弁逆流症は発生頻度が低く乳児や子どもで発症する疾患である。成人の先天性僧帽弁逆流症に関する記述はあるものの、これまで一連の手術に関する報告はない。我々は6年間に渡って同一施設内で行われた成人の先天性僧帽弁逆流症に関する手術経験を報告する。
手法:2000年から2006年にかけて、重度の先天性僧帽弁逆流症に関する手術を連続して実施した患者15人(内男性8人)、年齢16歳以上(中央値38歳;範囲16歳〜70歳)のデータをレビューした。先天性僧帽弁逆流症は同時期に実施した成人の僧帽弁に対する手術の2.1%に相当する。房室中隔欠損症と房室不一致(atrio-ventricular discordance)は除かれている。
結果:先天性僧帽弁逆流症6例(40%)は手術前に診断されていた。2人(13%)の患者はウィリアムズ症候群であった。病変部は環状拡大(100%)、小葉逸脱(87%)、腱異常(80%)、乳頭筋異常(40%)、弁裂(33%)などである。全症例でCarpentier法を用いた僧帽弁修復が行われた。院内死亡も退院後の死亡例もない。少なくともフォローアップ期間内(中央値:60ヶ月、範囲:6ヶ月〜83ヶ月)ではNYHA(ニューヨーク心臓病学会)機能クラスのTかUに相当し、洞調律の状態にある。経胸壁心エコー像によれば、患者11人(73%)には先天性僧帽弁逆流症が消失したかごくわずかになった。中程度の先天性僧帽弁逆流症が患者4人(27%)にみられた。再手術を受けた患者はおらず、心内膜炎も発生していない。
結論:先天性僧帽弁逆流症は成人では珍しくしばしば誤診されるが、弁の修復は可能で中期的予後は優れている。
(2008年9月)
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