先天性大動脈弁上狭窄症:手術と非手術の成績
Congenital Supravalvular Aortic Stenosis: Defining Surgical and Nonsurgical Outcomes.
Hickey EJ, Jung G, Williams WG, Manlhiot C, Van Arsdell GS, Caldarone CA, Coles J, McCrindle BW.
Division of Cardiovascular Surgery, Department of Surgery, University of Toronto, The Hospital for Sick Children, University of Toronto, Toronto, Canada.
Ann Thorac Surg. 2008 Dec;86(6):1919-1927.
背景:
大動脈弁上狭窄症は左心室流出路(LVOT)における珍しい狭窄病変である。我々はこの病気の自然史の特徴と手術治療による効果をまとめた。
方法:
1976年から2006年の間に大動脈弁上狭窄症と診断された95人の子どもについて調査を行った。手術の報告、及び複数回の心エコーの結果を分析した。
結果:
狭窄の形態(部分的82%;びまん的(広汎性):18%)はウィリアムズ症候群(n= 59, 62%)とは関連が無い。直視化手術に至るリスク(n = 47)は10年後で46% +/- 6%である。手術にいたるリスクは、基準的LVOT最大圧較差が高く、最小LVOT-Zスコアが小さいほど(p < 0.01; それぞれ 閾値 > 50mm Hg かつ < -3)、さらにウィリアムズ症候群でなければ(p = 0.01)高くなる。手術を受けていない患者はLVOT圧較差が徐々に低下し、上行大動脈のZスコアは時間とともに増加する。最小LVOT-Zスコアが小さく、圧較差が大きい状態が継続しているケースは手術を受けた子どもと関連している。手術の結果、LVOT通過障害は持続的に改善し、上行大動脈サイズの増加割合が大きくなる。10年後,15年後の全生存率は 94% +/-3% と 85% +/- 7%であり、手術を受けたグループと受けなかったグループで差はなかった。単独の死亡原因は、一変量分析でも多変量解析でも確認されていない。
結論:
多くの子ども、特にウィリアムズ症候群の場合は治療を行わなくても狭窄は快復する。手術を受けた子どもは、LVOT圧較差が高くて最小LVOT-Zスコアが小さく、その傾向が持続していた。手術による治療は自然史を変える。つまりLVOT通過障害が改善し最狭窄は発生せず、上行大動脈サイズは正常値に向けて大きくなる。
(2008年11月)
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