先天性大動脈弁上狭窄症に対する20年間の手術経験
Twenty-year surgical experience with congenital supravalvar aortic stenosis.
Scott DJ, Campbell DN, Clarke DR, Goldberg SP, Karlin DR, Mitchell MB.
The Children's Hospital Heart Institute and University of Colorado Denver Health Sciences Center, Aurora, Colorado, USA.
Ann Thorac Surg. 2009 May;87(5):1501-7; discussion 1507-8.
背景:
先天性大動脈弁上狭窄症(SVAS)はウィリアムズ症候群やそれ以外のエラスチン遺伝子欠失に合併する動脈症である。今回の調査目的は先天性大動脈弁上狭窄症修復の成績をレビューするとともに人工膜を利用したパッチ動脈修復術を自己組織移動動脈形成術と比較する。
手法:
1988年から2008年までに行われた先天性大動脈弁上狭窄症修復術を過去にさかのぼって再調査した。ドップラー照合によって最大瞬間圧較差を推定した。スチューデントのT検定あるいはフィッシャーの正確確率検定を用いて特性値を比較した。リスクファクターはカイ2乗検定を用いて分析した。生存確率は Kaplan-Meier 法で見積もった。
結果:
一回目の大動脈弁上狭窄症修復術25例中、自己組織移動動脈形成術が10例、人工膜パッチ動脈修復術が15例あった。人工膜パッチのグループには、ドッティ法(Doty technique 9例)、パッチ拡張移動動脈形成術(patch-augmented slide aortoplasty 3例)改定ブロム法(modified Brom technique 1例)、移植片挿入法(interposition graft 1例)、横行弓拡張2洞パッチ(two-sinus patch with transverse arch augmentation 1例)が含まれる。1例は術後早期に、1例は長時間経過後に死亡している。全患者に関する累積生存率は、5年後、10年後ともに96%である。無再発生存率は両グループ間に差はない(p = 0.481)。長時間経過後に再手術を受けた患者は2名(両者とも大動脈二尖弁に対する人工膜パッチ術を受けた患者であり、大動脈弁狭窄の再発が1例、大動脈弁閉鎖不全症が1例である)であった。大動脈二尖弁のみが再手術に到るリスクファクター(p = 0.003)であった。びまん性症状に対して移動動脈形成術を予定した手術を受ける時点で体重が10kg以下だった患者は3人だった。2名はパッチ拡張を必要とし、1名は術後1年以内に圧較差が再発した。
結論:
大動脈弁上狭窄症修復の成績はどの手術法でも良好である。今回の経過観察結果からは自己組織移動動脈形成術の優位性は見られない。我々の経験によれば、びまん性の患者に対して移動動脈形成術は薦められない。
(2009年4月)
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