症候群と先天性心疾患:染色体異常から単一遺伝子病へ
城尾邦隆 (厚生団 九州厚生年金病院 小児科)
日本小児循環器学会雑誌:Vol.26, No.1, Page4-18 (2010.01.01)
先天性心疾患に顔貌など体表の徴候や他臓器の病変を伴うことは稀ではない。特に心疾患を伴う症候群を、(1)古典的染色体異常、(2)微細欠失症候群、(3)単一遺伝子異常、(4)原因不明に分類整理することは、臨床的にも発生学基礎研究にも有用である。著者は同一施設で約30年間診療して、臨床疫学と遺伝学発展、例えば円錐動脈幹異常顔貌症候群から22q11.2欠失への展開を身近にし、遠隔期の問題にも直面しているので、心臓症候群の診断と治療、家族説明、遠隔期援助の要点などを解説する。(1)Down症候群の生命予後は改善され、中等度以上の肺高血圧残存はごく例外的であった。遠隔期に糖尿病の増加がみられる。18トリソミーへの外科治療の試みは満足できるものではなく、遠隔期には肝芽腫や高度精神発達遅滞がみられた。(2)22q11.2欠失症候群を96例診断した。Fallot四徴・肺動脈閉鎖・主要体肺側副動脈(TOF.PA.MAPCA)の心内修復達成率はなお低く、精神発達遅滞、免疫不全、自己免疫疾患など問題は多彩である。家族性発症が約10%だった。Williams症候群(7q11.23欠失)は27例で、母児遺伝1組と双生児1組だった。妖精様顔貌や発達遅滞を欠く大動脈弁上狭窄(SVAS)例にELN遺伝子の変異が検出された。(3)Noonan症候群は臨床像が多彩で類縁疾患もあり混乱していたが、PTPN11(12q24.1)変異の発見で大きな進展がある。
(2010年3月)
目次に戻る