ウィリアムズ症候群と循環器異常を併せ持つ患者の長期予後



Long-Term Outcomes of Patients With Cardiovascular Abnormalities and Williams Syndrome.

Collins RT 2nd, Kaplan P, Somes GW, Rome JJ.
Division of Cardiology, Children's Hospital of Philadelphia, Philadelphia,Pennsylvania;
University of Pennsylvania School of Medicine, Philadelphia, Pennsylvania.
Am J Cardiol. 2010 Mar 15;105(6):874-878.

ウィリアムズ症候群は先天的疾患で循環器・結合組織・中枢神経に影響があり、出生8000人に1人の割合で生まれる。これまでの論文では、希少なウィリアムズ症候群の患者には高い頻度で循環器異常見られると報告されている。1980年1月1日から2007年12月31日までの間に我々の施設で診断を行ったウィリアムズ症候群患者に対して遡及研究を行った。ウィリアムズ症候群の診断は経験を積んだ遺伝医の診断やFISH法を用いて行った。循環器異常は心エコー、心臓カテーテル、CT血管造影で診断を行った。治療不要(Freedom from intervention )の判断はカプラン・マイヤー生存分析(Kaplan-Meier analysis)を用いた。調査対象集団はウィリアムズ症候群患者270人である。発表当時の年齢は3.3歳±5.9歳で経過観察期間は8.9年±9.0年(0歳から56.9歳の範囲)だった。循環器異常は患者の82%にみられた。もっとも多くみられた病変は45%にみられた大動脈弁上狭窄症であり、次が37%の抹消肺動脈狭窄症であった。20%は両病変を併せもつ。その他のよくみられる病変は、僧帽弁の逸脱症と閉鎖不全で15%、心室中隔欠損が13%、肺動脈弁上狭窄症が12%である。外科手術やカテーテルによる治療は21%に実施された。治療不要の割合は、1年、5年、10年、20年、40年後の時点でそれぞれ91%、81%、78%、72%、62%であった。8人の患者が死亡している。結論として、循環器異常はウィリアムズ症候群患者に共通して見られる疾患であるが、この集団における大動脈弁上狭窄症や抹消肺動脈狭窄症は以前に報告されている発生率より低い。ウィリアムズ症候群と循環器異常を併せ持つ患者において、治療を受けることが多く、通常は生後5年以内に実施される。ウィリアムズ症候群患者の多くは、その後の長い経過観察期間中に治療が必要になることはなく、総合的な死亡率は低い。

(2010年3月)

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この論文に関する解説記事が米国のウィリアムズ症候群協会の会報に掲載されました。

(2010年5月)

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Good Long-Term Outcomes With Cardiovascular Abnormalities

“Heart to Heart” April 2010、page 6

フィラデルフィア子ども病院の医師団が2月に「American Journal of Cardiology」誌に発表した論文によれば、ウィリアムズ症候群の患者の大部分は循環器系異常に対する治療は必要ではなく若年死亡率も低いとのことです。

コリンズ医師(De. R. Thomas Collins)がロイターヘルス(Reuters Health)に説明したところによれば、「我々の研究結果から、病変の状態ごとに必要な治療とその時期に関する見込みをご家族に伝えることができます。軽度の大動脈弁上狭窄症をもつお子さんであれば治療が必要になることは一生ないと言って間違いありません。」

270人の患者を対象に研究を行い、コリンズ医師とその同僚らは82%の患者に循環器系の異常があり、45%が大動脈弁上狭窄症、37%が末梢性肺動脈狭窄症、14%が大動脈縮窄症、11%が肺動脈弁上狭窄症であることを確認しました。

平均9年間の経過観察期間(最高齢は57歳)の間に、大動脈弁上狭窄症患者の13%が自然回復に向かい、症状が軽度だった患者の16%は完全に自然治癒しました。経過観察中に大動脈弁上狭窄症が重度のレベルに悪化した症例は10%に過ぎません。コリンズ医師は、「これまで大動脈弁上狭窄症は常に悪化するといわれていましたが、我々のデータによればその指摘は常に正しいとは言えません。実際、大動脈弁上狭窄症の病変は悪化するより開放に向かうことのほうが多く、軽度の大動脈弁上狭窄症で治療を必要とするのは、1歳までに発見された患者だけでした。」

37%にみられた末梢性肺動脈狭窄症も同様に自然回復に向かいます。症状が軽度の患者62人中40%は完全に治癒し、狭窄が重度のレベルまで進行した患者は2名だけでした。

全体でみた場合、患者270人中56人(20%)で手術やカテーテル治療が必要になり、56回の手術の内43回は患者が5歳より前に行なわれました。56人中16人だけが複数回の手術が必要でした。患者8人(大人3人、こども5人)が経過観察期間中に死亡しました。

コリンズ医師はウィリアムズ症候群患者の循環器系に影響を与える高血圧の治療を目的とした手術を必要とするかどうかは、MRIを使って動脈硬化の状態を検査することでアドバイスできると述べています。



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