重度の高カルシウム血症を呈したWilliams症候群の一例
河野 敦子、都 研一
福岡県立こども病院・感染症センター 内分泌代謝科
日本内分泌学会雑誌 88(1):2012.4 307ページ
【症例】
【現病歴】
1歳0か月時、歯科でフッ素を塗布して以来、ミルク以外を摂取しなくなった。家族の自己判断でミルクは倍濃度に作成して与えていた(Ca 1000mg/day相当:日本人摂取推奨量 430mg/day)。1歳11か月時に鼡径ヘルニアの術前採血で高カルシウム血症を指摘され当科入院した。
【身体所見】
身長76.2p(-2.5SD) 体重8.0s(肥満度 13.8%) 粘膜乾燥あり 不機嫌で易刺激性あり。
【検査所見】
Ca 15.9mg/dl、Ca++ 2.0mmol/l、P 5.4mg/dl、BUN 27mg/dl、Cr 0.86mg/dl、I-PTH 12pg/ml、PTHrP < 1.0pmol/l、尿Ca/Cr 0.9、25OHD 39ng/ml、1α,25(OH)2D 5.0pg/ml 腎エコーで石灰化あり。
【経過】
生理食塩水、フロセミド投与、カルシウム制限を開始し一旦血清Caは11r/dlまで低下した。しかし輸液を中止すると再び上昇し、カルシトニンを併用した。血清Caが安定するまで11日間のカルシトニンの投与を併用した。現在、カルシウム制限のみで血清Ca11r/dl前後を保ち経過観察中である。
【考察】
Williams症候群における高カルシウム血症には、ビタミンDを介したカルシウム代謝異常の関与が示唆されている。過去に、カルシウム強化ミルクの投与に伴い重度の高カルシウム血症を呈したWilliams症候群の症例が報告されており、本症例においてもカルシウムの過剰摂取が高カルシウム血症の誘因になったと推測した。Williams症候群において、人工乳などカルシウム含有量の多い食品で栄養する際には、カルシウムの過剰摂取に注意が必要であると考えた。
(2012年8月)
目次に戻る