ウィリアムズ症候群の有無による大動脈弁上狭窄症患者のQT間隔の心電図比較



Comparison of Electrocardiographic QTc Duration in Patients With Supravalvar Aortic Stenosis With Versus Without Williams Syndrome.

McCarty HM, Tang X, Swearingen CJ, Collins RT 2nd.
Arkansas Children's Hospital, Little Rock, Arkansas.
Am J Cardiol. 2013 Feb 20. pii: S0002-9149(13)00404-9. doi:10.1016/j.amjcard.2013.01.308. [Epub ahead of print]

ウィリアムズ症候群における循環器系異常はエラスチン遺伝子を含む染色体7q11.23領域の大規模な欠失を原因とするエラスチンのハプロ不全が大きな要因である。ウィリアムズ症候群患者が突然死するリスクは母集団に比べて25倍から100倍大きい。補正されたQT間隔はウィリアムズ症候群患者においては14%ほど延長されている。非症候性の大動脈弁上狭窄症患者(NSVAS)はエラスチン遺伝子の突然変異によってエラスチンのハプロ不全になり、循環器系の表現型はウィリアムズ症候群と同じである。これまでにNSVASにおけるQT間隔の評価研究は行われていない。アーカンサスこども病院に1985年1月1日から2012年1月1日の間に継続的に受診したNSVAS患者の全ての心電図を遡及的にレビューした。非洞リズム(nonsinus rhythm)や測定不能なインターバルを有する心電図は除いた。心電図は以前読解したことのない1人の読解者が解析した。460ms以上のQT間隔を延長と定義した。NSVASのコホートは、これまでに報告されているウィリアムズ症候群や対照群のデータと、連続心電図変数(continuous electrocardiographic variables)とQT延長に関する汎化2項推定方程式(generalized estimating equation for binary indicators)を組み合わせた混合モデルを用いて比較した。汎化推定方程式は1000個の複製標本を用いでブートストラップを行った。35人のNSVAS認定患者から得られた合計300個(メディアン6、範囲1〜27)の心電図が基準に合致した。ウィリアムズ症候群患者から得られた合計482個の心電図と対照群から得られた1522個の心電図が含まれる。心電図を採取した時点のNSVAS患者の平均年齢は7.3±6.9歳であり、64%が男性である。NSVASグループの平均QT間隔は409±20ms、対照群は418 ± 17 ms(p <0.001)、ウィリアムズ症候群グループは436 ± 27 ms(p <0.001 対照群と比較して)であった。QT延長の発生率はNSVASグループでは0.3%、対照群は2.0%(p <0.001)、ウィリアムズ症候群グループは14.8%(p <0.001 対照群と比較して)であった。NSVAS患者に死亡例はない。結果として、NSVAS患者においては循環器系の再分極は正常であった。エラスチンのハプロ不全はウィリアムズ症候群患者における病因ではないことになる。7q11.23領域に存在する他の遺伝子がウィリアムズ症候群におけるQT延長に寄与している可能性が検討されるべきである。

(2013年3月)



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