異なった臨床経過を辿ったWilliams-Beuren症候群の一卵性双胎例
杉谷 雄一郎1)、宗内 淳1)、大村 隼也1)、寺師 英子1)、長友 雄作1)、倉岡 彩子1)、竹中 聡1)、渡邉まみ江1)、城尾 邦隆1)、落合 由恵2)、瀬瀬 顕2)
九州厚生年金病院 小児科1)、九州厚生年金病院 心臓血管外科2)
日本小児循環器学会雑誌 第29巻 suppl., 2013年6月 s184ページ
【背景】
Williams-Beuren症候群は染色体7q11.23領域が欠失し、心血管合併症として大動脈弁上狭窄、末梢肺動脈狭窄、冠動脈開口部狭窄が知られている。一卵性双胎例の報告は少なく、臨床経過についてもあまり知られていない。今回異なる臨床経過を辿ったWilliams症候群双胎例を経験した。2人とも妖精様顔貌で、乳児期より精神発達遅滞がみられた。生後3か月時に遺伝子検査(FISH法)でWilliams症候群と診断された。
【第1子】
在胎39週、出生体重2205g。出生後重症肺動脈狭窄症(PS)、軽度大動脈弁上狭窄症(SVAS)と診断された。生後5か月時の心臓カテーテル検査では右室圧72mmHg、右室/左室圧比0.80であった。右分岐部および弁上狭窄に対して経皮的バルーン拡張術(BAP)を施行した。BAP後右室圧は改善がみられなかったが、乳児期以降自然軽快した。また大動脈圧90mmHg、左室圧90mmHg、上行大動脈移行部径(STJ)/大動脈弁輪径(AVA)=6.0/8.3o=0.72で、hourgrass様の軽度SVASをみとめたが、11歳の現在でもSTJ/AVA=10.9/15.2o=0.72と進行はなく経過している。
【第2子】
出生体重1995g。出生後重症PS、軽度SVASと診断された。同じく生後5か月時の心臓カテーテル検査では右室圧76mmHg、右室圧/左室圧比0.78であった。PSはびまん性の末梢狭窄が主体でBAPは施行しなかったが、乳児期以降自然軽快した。一方、SVASは大動脈圧81mmHg、左室圧98mmHgと20mmHgの圧較差があり、STJ/AVA=5.0/7.6o=0.65であった。第1子より狭窄が強く、徐々に進行した。10歳時の心臓カテーテル検査で大動脈圧81mmHg、左室圧150mmHg、冠動脈開口部狭窄はなかったがSTJ/AVA=11.1/18.6o=0.60とSVASは進行した。進行性の狭窄と運動時の心電図変化のため大動脈形成術(Myer’s法)を施行、術後経過は良好である。
【まとめ】
一卵性双胎という同じ遺伝的背景でありながら、PSはともに軽快したが、SVASは第2子のみ進行し手術に至るという異なった表現型を呈した。
(2013年10月)
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