重症末梢性肺動脈狭窄に対するバルーン血管形成中に肺動脈攣縮を生じたWilliams症候群の男児例
麻生 健太郎、桜井 研三、有馬 正貴、後藤 建次郎
聖マリアンナ医科大学 小児科
日本小児循環器学会誌 28巻 suppl(平成24年6月1日) s253ページ
Williams症候群(WS)の心合併症は大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄(PPS)の頻度が高い。このうちPPSは自然軽快することもあるため、乳幼児期でのカテーテル治療の是非については未だ議論が残る。またその治療効果についてのまとまった報告も少ない。我々は新生児期から重度のPPSを呈し、カテーテル治療施行中に肺動脈攣縮を生じ死亡したWS症例を経験した。文献的な考察を加えて報告する。
【症例】
10ヶ月男児。身長69p、体重7.5s。遷延性肺高血圧症のためNICUに入院歴があり入院中にPPSが確認されている。生後2ヶ月より当院でフォロー。特徴的な顔貌と心疾患からWSが疑われ、遺伝子検査の結果よりWSの診断確定。発達発育ともに良好であったが心エコーでのPPSの程度に変化は認められず、右室の肥大性変化も顕著となってきたため、月齢10ヶ月で心臓カテーテル検査を施行した。右室圧99/3mmHg、大腿動脈65/36(47)mmHg、右室造影及び肺動脈造影での左右PA径は約2oであった。右室圧が体血圧を大きく上回っておりバルーン血管形成術(BPA)の適応ありと判断した。BPAは3oのSterlingバルーンを用いて3回拡張、その後4oバルーンにサイズアップし1回目の拡張を行った直後から血圧、酸素飽和度が急激に低下。右室造影を行ったところ左右のPAは造影されず、肺動脈攣縮と判断した。以後集中治療を行ったがカテーテル治療の翌日に心室細動を起こし死亡した。
【考察】
WSに対するBPAでの同様の合併症報告は皆無であった。PPSの自然軽快は約40%程度で認めるとされるが重度のものは自然軽快が期待できないという報告もあり治療介入の適応や時期については議論がある。2001年のGeggelらはWS、PPSに対するカテーテルの治療の適応を右室圧が体血圧を上回る場合としているが今回の我々の経験を鑑みると狭窄の程度に関わらず、無症状であるならばカテーテル治療は控えるべきなのかもしれない。
(2013年11月)
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