当施設で経験したWilliams症候群30例の心血管病変の臨床像
大木 寛生1)、福島 直哉1)、齋藤 美香1)、玉目 卓也1)、横山 晶一郎1)、三浦 大1)、澁谷 和彦1)、木村 成卓2)、松原 宗明2)、厚美 直孝2)、寺田 正次2)
東京都立小児総合医療センター 循環器科 1)
東京都立小児総合医療センター 心臓血管外科 2)
日本小児循環器学会誌 28巻 suppl(平成24年6月1日) s297ページ
【背景】
Williams症候群(WS)の多くはelastin血管病変として大動脈弁上部狭窄(SVAS)や末梢性肺動脈狭窄(PPS)を合併するが臨床像は幅広い。
【目的】
当施設で経験したWSの心血管病変の臨床像を総括し治療戦略について検討する。
【方法】
FISH法で確定診断したWS30例の診療録を後方視的に調査した。
【結果】
年齢:中央値10歳(1〜24歳)、性別男:男15例、女15例、診断契機:心雑音24例、発達遅滞3例、その他膀胱憩室、神経因性膀胱、鼡径ヘルニア各1例、心血管病変:SVAS/PPS合併25例、SVAS単独2例、僧房弁逸脱兼閉鎖不全8例、血管輪(右大動脈弓左動脈管索)2例、その他大動脈狭窄、大動脈弁閉鎖不全、右冠動脈狭窄、高血圧各1例、心血管病変なし3例。SVAS圧較差:中央値22mmHg(6〜62mmHg)、右室/体血圧(RV/BP)比:中央値0.32(0.21〜1.9)。SVAS圧較差30mmHg以上で経年的憎悪あり。RV/BP比1.0以上2例(治療難渋例)の肺動脈は低形成で全分葉枝に多発的狭窄を認め経年的軽快なし。心カテ適応:心エコー上SVAS圧較差50mmHg以上6例、RV/BP比1.0以上2例。手術(全例生存):大動脈弁上部再建術4例(Doty法3例、Myers法1例)、肺動脈形成術2例(右1例、両側1例)。治療難渋例:症例A(SVAS圧較差18mmHg、RV/BP比1.1、両方向短絡の卵円孔開存5o)は心カテで肺動脈圧測定時に徐脈となり蘇生、治療戦略検討中、月例10で突然死した。症例B(SVAS圧較差60mmHg、RV/BP比1.9)は大動脈弁上部再建術、両側肺動脈形成術、心房中核欠損作成術後、RV/BP比1.8、肺動脈全分葉枝狭窄あり、補助循環離脱できず、Hybrid治療(開胸補助循環下、主肺動脈にシース挿入、両側上葉枝/中下葉枝にステント4個留置)後、RV/BP比0.5に低下、救命に成功した。
【結語】
WSの多くはSVAS/PPS合併例で、年齢とともにSVASは憎悪、PPSは軽快する傾向があるが、RV/BP比1.0以上の治療難渋例を救命するためにはHybrid治療など積極的にRV/BP比を1.0以下にする治療戦略が必要と考えられた。
(2013年11月)
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