大動脈弁上狭窄によりLeft coronary cuspが大動脈壁と癒合し、左冠動脈閉塞、大動脈狭窄を認めたWilliams syndromeの一例
櫻井 寛久、桜井 一、阿部 知伸、杉浦 純也、寺田 貴史、種市 哲吉
社会保険中京病院 心臓血管外科
日本小児循環器学会雑誌 第29巻 suppl(平成24年6月)、233ページ
【症例】
症例は13歳男児。出生後ウィリアムズ症候群と診断され、当院にて経過観察、一歳時に呼吸困難、チアノーゼにて入院、心筋炎から拡張型心筋症への移行を認めた。12歳時にカテーテル検査を行い、大動脈―左室間で42mmHgの圧較差、3度大動脈閉鎖不全を認め、左冠動脈の閉塞、また左coronary cuspの造影不全を認めた。上記所見にてKonno手術による大動脈置換を予定した。術中、大動脈を遮断し、順行性心筋保護にて心停止を得て、大動脈を切開、右冠動脈口を確認できたが、左冠動脈口を確認できず、逆行性にて心筋保護注入したところ、Left coronary cuspにあたるところで膨隆を認め、膨隆部を切開するとValsalva内腔が存在し、その奥に左冠動脈が開口していた。その後弁尖を切除し、弁輪系が12oであったため、予定通りKonno切開で弁輪拡大を行い、19oOn-X Valveを置換した。術後経過良好で、心機能の改善を認めた。
【考察】
ウィリアムズ症候群は7番染色体のエラスチン遺伝子の欠損による先天異常としてしられ、大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄といった数々の心血管疾患を引き起こす。これまで冠動脈の狭窄についても大動脈壁のthickeningによる冠動脈入口部での狭窄については報告されているが、本症例においてはLeft coronary cuspが大動脈壁と癒合しdead spaceを作り、冠動脈の閉塞を認めた非常に珍しい症例である。大動脈造影においても後方視的にはそれに合致する所見を認めた。1歳時の拡張型心筋症への移行についても冠動脈閉塞が関係していたことが考えられた。
(2014年1月)
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