Williams症候群での心肺停止状態から救命しえた一例



吉村 拓巳、老松 優、山村 智、渕上 俊一郎、松川 将三、角田 隆輔
熊本赤十字病院 循環器内科
日本心臓病学会誌 Vol.8 Supplement T(2013年9月20日〜22日)、666ページ

症例は22歳男性。Williams症候群と幼少時に診断され、僧房弁閉鎖不全症3度あるものの、心不全傾向はなく、内服にて安定していた。ある日立ち読み中に卒倒し、店員より救急要請。救急隊による蘇生を行われながらAED計6回の作動あり。近医に搬送され心室細動に対して電気的除細動200Jにて頻脈性心房細動となり再度cardioversionにて洞調律に復帰後当院に転院搬送された。JCS300、vitalは安定しており、低体温療法を開始。Swan-Ganzカテを挿入する際に心室性期外収縮よりwide QRS tachycardiaとなりcardioversion施行し洞調律に復帰。34℃まで24時間で冷却し2日かけて36℃まで復温。肺炎を併発した以外は大きな合併症は認めなかった。頭部CTでは明らかな異常所見はなく、神経学的にも問題はなかった。第8病日に抜管。第15病日に植込み型除細動器(JCD)埋め込み術を行った。第21病日に冠動脈造影。電気生理学的検査(EPS)を施行。冠動脈に有意狭窄は認めなかった。EPSでは右脚ブロック型で心房伝導時間(VA)の長いPSVT1、右脚ブロック型でVAが長いPSVT2 narrow QRSのPSVT3の3つの頻拍が見られた。アデノシン三リン酸静注にて頻拍は停止し、脚ブロックを伴うconcealded WPW症候群による房室リエントリー性頻脈と考えられた。PSVT2をCARTO systemを用いてmappingすると最早期は冠静脈洞入口部の低部付近にあり、3回の通電後はlong VAでは頻脈待機しなくなった。PSVT1は持続しないため、右室よりのpacing下での心房電位のmappingを行ったところ最早期は冠静脈洞の天井付近にあり、1回の通電にてPSVT1は誘発されなくなった。ISP1mcg/min負荷下での連続刺激および期外刺激による誘発ではPSVT1-3は誘発されなかったが、非通常型心房粗動(TCL216ms)を認めた、すぐに心房細動に移行してしまいmapping困難であり、心腔内除細動システムにより除細動を行い終了した。その後は経過良好であり、第27病日に独歩退院された。

(2014年4月)



目次に戻る