心臓カテーテル検査中に心筋梗塞を発症し、左冠動脈主幹部拡大術を施行したWilliams症候群の1例
原田 順和、島田 勝利、早川 美奈子、小坂 由道、坂本 貴彦
長野県立こども病院 心臓血管外科
日本冠疾患学会雑誌 Vol.19 Supplement(2013年12月12日〜14日)、150ページ
症例は4ヵ月女児。生後心雑音を指摘され、心エコー検査で両側抹消性肺動脈狭窄、大動脈弁上狭窄と診断された。3ヵ月時、精査目的で当院紹介受診、顔貌からWilliams症候群が疑われ、FISH法で診断確定。心エコー検査では大動脈弁輪軽6.2o、ST junction3.7mm、上行大動脈6.2o、左右冠動脈開口部に狭窄は認めず。胸部造影CTでは両側肺動脈分岐部狭窄、大動脈低形成を認めたが、心電非同期のため冠動脈は評価できなかった。4ヵ月時、血行動態、大血管の形態、冠動脈の評価目的に心臓カテーテル検査を施行。気管内挿管し全身麻酔導入後、心電図モニター上ST低下を認め、酸素投与、容量負荷にて一時改善したが、カテーテル挿入中に再びST低下を認め、続いて徐脈、血圧低下を来し、胸骨圧迫およびアドレナリン投与を開始したが改善が得られず、緊急開胸しECMOを導入した。大動脈基部より冠動脈造影を施行、左冠動脈主幹部(LMT)狭窄を認め、2日目に拡大形成術を施行した。LMT開口部はpin-hall状で、ガイドワイヤーを挿入し上行大動脈から開口部に向かって切開した。5o長にわたりLMTを切開し、グルタールアルデヒド処理した自己心膜でパッチ拡大した。同時に上行大動脈壁をパッチ拡大し、大動脈弁上狭窄を解除した。広範囲の左室梗塞によりECMO離脱は困難であった。4日目に脳出血を来し死亡した。冠動脈イベントの原因について経過、解剖所見より検討を行い報告する。
(2014年4月)
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