冠動脈病変を合併したWilliams症候群63例の検討
潟山 亮平1)、柳 貞光2)、上田 秀明2)、康井 制洋 2)、麻生 俊英3)
平塚市民病院 小児科 1)
神奈川県こども医療センター 循環器科 2)
神奈川県こども医療センター 心臓血管外科 3)
日本小児循環器学会誌 29巻 suppl(2013年) s344ページ
【背景】
Williams症候群は、冠動脈狭窄病変を合併することがあり突然死の可能性がある。Williams症候群 に合併した冠動脈病変について検討した。
【対象】
診療録(1971年〜2011年)よりWilliams症候群63例(男30例、女33例、年齢1歳−40歳(中央値12歳))を抽出し後方視的に検討した。
【結果】
冠動脈病変を2例(有病率3%)に認めた。そのうち1例は左冠動脈主幹部の開口部狭窄と壁内走行を認め冠動脈形成術を行った。他の1例では左冠動脈閉塞を認めたが無症状であり経過観察となった。また、カテーテル検査中の心電図変化・造影所見から冠動脈狭窄を疑われた症例が2例あったが手術時所見で異常はなかった。冠動脈病変に関連した突然死はなかった。
【症例1】
冠動脈狭窄例。1か月で心雑音から大動脈弁上狭窄(SVAS)、末梢性肺動脈狭窄(PPS)と診断。体重増加不良、多汗、僧房弁逆流を認め6か月時にカテーテル検査でSVAS、PPS、左冠動脈開口部狭窄と診断。造影後に徐脈・心電図ST低下あり。9か月時に冠動脈パッチ拡大、SVAS、PPSパッチ拡大を実施。術中所見で大動脈壁は著明に肥厚し左冠動脈は細く壁内走行であった。
【症例2】
冠動脈閉塞例。3歳でPPSを指摘されたが自然軽快。11歳児のカテーテル検査で左冠動脈閉塞に気づかれた。心筋シンチで軽度の前壁血流低下(LAD領域)と運動負荷で心電図ST低下を認めた。自覚症状はなく未治療でフォロー。
【症例3】
狭窄疑い例。10か月時のカテーテル検査でPPS、SVASと診断。造影後に心電図ST低下、徐脈・低血圧となり心肺蘇生を実施。造影で左冠動脈狭窄が疑われた。以後の虚血を疑うエピソードはなく5歳時にSVASパッチ拡大術を実施。術中の冠動脈所見は正常であった。
【まとめ】
Williams症候群は冠動脈狭窄・閉塞についての評価が重要である。監査中に心電図変化を認めた場合には特に慎重な評価が必要である。突然死を防ぐためにも冠動脈病変への手術介入が必要である。
(2014年5月)
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