大動脈弁上狭窄を伴わない左冠動脈低形成で診断されたWilliams症候群の乳児例
東京慈恵会医科大学小児科学講座
河内貞貴、浦島崇、伊藤怜司、森琢磨、藤本義隆、藤原優子、井田博幸
日本小児科学会雑誌 第119巻第2号 486ページ 平成27年2月1日
【背景】
Williams症候群(WS)は7番染色体長腕の微細欠失症候群(7q11.23)であり、妖精様顔貌や末梢性肺動脈狭窄・大動脈弁上狭窄などの心疾患から診断されることが多い。我々は、大動脈弁上狭窄(SVAS)がないにもかかわらず左冠動脈(LCA)低形成から重度左心不全を呈し、WSと診断された乳児例を経験したので報告する。
【症例】
症例は在胎39週、2385gにて出生した4ヵ月男児。生後1ヵ月までは問題なく経過していた。2ヵ月時体重増加不良を指摘され、4ヵ月時にも同様であったため前医にて心エコー施行したところ、拡張型心筋症の疑いで当院へ紹介入院となった。入院時LVDd33mm/LVEF16%と著明な左室拡大を伴う心不全を呈しており、精査の結果SVASは認めないがLCAの低形成を認め、左室機能不全の原因と考えられた。また、特徴的な顔貌から染色体検査を行いWSと診断された。心不全治療により、心機能は改善し現在外来経過観察中である。
【まとめ】
本症例はLCAの低形成を認めたもののSVASは認められず、報告されている冠動脈狭窄を伴うWSとは異なり稀な症例である。WSでは、検査や手術時の鎮静・麻酔により心肺停止にいたる例も報告されており、本症例においてもリスクは高いと考えられ、今後の心臓カテーテル検査や外科的介入などについても慎重に検討すべきであり、文献的考察を含めて報告する。
(2015年9月)
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