小児領域における急性心筋梗塞の臨床像
仁田 学1)、滝聞 浄宏1)、安河 内聰1)、武井 黄太1)、田澤 星一1)、島袋 篤哉1)、百木 恒太1)、内海 雅史1)、岡村 達2)、梅津 健太郎2)
1) 長野県立こども病院循環器小児科
2) 長野県立こども病院心臓血管外科
日本小児科学会雑誌 第120巻 第2号 270ページ (2016年2月)
【背景】
小児領域で急性心筋梗塞(AMI)は稀であるが、成人と異なり一度発症すると治療が困難なことが多い。
【目的】
当院で経験したAMIの頻度と治療現状を明らかにすること。
【対象・方法】
対象は1993年5月から2015年4月までの22年間に経験したAMI12例(男児6例、平均年齢1.4歳±2.5歳)で、先天性心疾患(CHD)が9例、後天性心疾患が3例。ST上昇の有無、梗塞責任血管、治療、予後について後方視的に調査した。
【結果】
CHD術後例では完全大血管転位症(TGA)が4例(5%)と多く、機序は移植冠動脈の入口部狭窄(3)と拡大した主肺動脈による左前下行枝への圧迫(1)であった。AMIは原疾患としての冠動脈形態異常又は冠動脈に対する外科的治療を行ったCHD例と川崎病後冠動脈瘤症例に認められた。治療としては薬物的治療6例、血行再建6例で、特徴的なものとしてTGA術後症例で冠動脈を圧排する主肺動脈瘤の切除、Aubert法による冠移植後狭窄への再Aubert手術、Williams症候群症例への左冠動脈入口部パッチ拡大手術が挙げられる。
【結語】
小児におけるAMIは解剖学的冠動脈異常又は冠移植術に関連する例が多く、治療には一般的な血行再建以外にも工夫を要する。
(2017年5月)
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