ウィリアムズ症候群患者の心合併症の長期予後に関する検討
○蒲生 彩香, 稲井 慶, 古谷 喜幸, 朴 仁三 (東京女子医科大学循環器小児科)
第53回日本小児循環器学会総会 学術集会
Poster | 染色体異常・遺伝子異常
Poster (II-P19)
Chair:Kazuhiko Shibuya(Department of Cardiology, Tokyo Metropolitan Children's Medical Center)
Sat. Jul 8, 2017 6:15 PM - 7:15 PM Poster Presentation Area (Exhibition and Event Hall) 6:15 PM - 7:15 PM
【背景】
ウィリアムズ症候群は染色体7q11.23領域の微細欠失により10.000人に一人の割合で発症する遺伝子疾患である。染色体7q11.23領域にはエラスチン遺伝子を含むため、血管の弾力性が落ち、中膜が肥厚し、平滑筋細胞が肥大することが先天的心血管系の異常が生じる原因と考えられている。一般に、肺動脈狭窄は軽快することが多いといわれているが、大動脈弁上狭窄の患者は悪化する可能性があるとされる。しかし、成人期以降に心血管疾患がどのような経過をたどるのかについてはいまだ明らかとはいえない。
【目的】
ウィリアムズ症候群の成人患者における大動脈弁上狭窄と肺動脈分枝部狭窄の長期予後を明らかにすること。
【対象と方法】
当院を受診中のウィリアムズ症候群の成人患者で、10年以上経過観察できた12症例について小児期と成人期(20歳以降)で心エコー所見を後方視的に比較検討し、大動脈病変と肺動脈病変の長期的な経過について後方視的に調査を行った。
【結果】
大動脈弁上狭窄については、小児期の狭窄部流速2.2+/-0.8m/、成人期で1.9m/s+/-0.7と有意な変化は認められなかった(p=0.086)。小児期のうちに進行して外科的介入が行われた症例が2例あったが、いずれも最高流速が4m/s を超える症例であった。3.5m/s 未満の患者はむしろ軽快傾向にあり、2m/s 未満の軽症患者では小児期も成人期もほぼ変化はなかった。肺動脈狭窄についても、推定右室圧および肺動脈分枝部狭窄の流速において、小児期と成人期において有意な差は認めなかった。成人期になって進行する症例はいずれにも認められなかった。
【考察】
ウィリアムズ症候群では、大動脈、肺動脈病変ともに、小児期からの重症例でなければ、成人期になって進行する症例は少ない可能性が示唆された。
(2019年11月)
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