ウィリアムズ症候群患者の肺動脈はセロトニン代謝遺伝子の変化と内膜層構造の変性を呈する
Pulmonary arteries of Williams syndrome patients exhibit altered serotonin metabolism genes and degenerated medial layer architecture.
Ma X(1), Collins RT(2), Goodman A(1), Hanley FL(1), Riemer RK(3).
Author information:
(1)Congenital Cardiac Division, Department of Cardiothoracic Surgery, Stanford University, CA, Stanford, USA.
(2)Department of Pediatrics - Cardiology, Stanford University, CA, Stanford, USA.
(3)Congenital Cardiac Division, Department of Cardiothoracic Surgery, Stanford University, CA, Stanford, USA. riemerk@stanford.edu.
Pediatr Res. 2021 Feb 2. doi: 10.1038/s41390-020-01359-5. Online ahead of print.
背景:ウィリアムズ症候群は7q11.23領域にある複数の遺伝子、特にエラスチン遺伝子(ELN)の欠失に伴う循環器系異常を特徴とする。末梢性肺動脈狭窄症(PPAS)がウィリアムズ症候群の小児患者に頻繁に診られる。ウィリアムズ症候群の肺動脈臓器の分子学的研究は、臓器提供不足のために進んでいない。
手法:ウィリアムズ症候群(n=8)及び臓器提供者(n=5)から得られた肺動脈臓器を使ってトランスクリプトーム、臓器の構造、発現したタンパク質の局所変異を比較した。
結果:セロトニンのシグナル経路に関連する遺伝子を含めて100個を超える遺伝子が4倍以上のレベルで異なる発現をしていた。またセロトニン輸送体SLC6A4の下方制御が60倍、セロトニン受容体HTR2Aの上方制御が3倍を超えて発生していた。組織検査によってウィリアムズ症候群患者の肺動脈において異常なエラスチン分布と平滑筋細胞形態が明らかになった。異常の内容は、顕著に短く混乱したエラスチン繊維と筋層間のプロテオグリカンが異常に豊富な細胞外基質の存在である。
結論:ウィリアムズ症候群においては、肺動脈におけるセロトニンのシグナル伝達、代謝、受容体を制御している遺伝子群の発現に顕著な異常性が存在する。これらの変化は動脈構造に対して明確な変化と関連しており、ウィリアムズ症候群の肺動脈分岐部分において剪断応力が増加することに対するセロトニンの促進効果を担う役割を果たしている可能性がある。
影響:セロトニンによるシグナル経路はウィリアムズ症候群患者の肺動脈や重度の末梢性肺動脈狭窄において著しく変化している。本研究では、ウィリアムズ症候群患者の肺動脈における組織学的あるいは生科学的な特徴を対照群と比較した。これは我々が知る限りこれまでには判明していないことを含んでいる。その結果、ウィリアムズ症候群患者の肺動脈には顕著な異常が存在することが示され、特にセロトニンのシグナル経路に顕著な変異が診られた。本研究における発見は、ウィリアムズ症候群患者の肺動脈狭窄に対する治療の新たな可能性を開発する方向性を提供している。
訳者注トランスクリプトーム:mRNAの全体集合を表す造語
(2021年2月)
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