血清ビタミンD代謝物質プロファイリングを用いたビタミンD関連高カルシウム血症の識別診断
Differential diagnosis of vitamin D-related hypercalcemia using serum vitamin D metabolite profiling.
Kaufmann M(1)(2), Schlingmann KP(3), Berezin L(1), Molin A(4), Sheftel J(1), Vig M(1), Gallagher JC(5), 永田 亜希子(6), Masoud SS(6), 坂本 良太(6), 長澤 和夫(6), 上杉 志成(7), Kottler ML(4), Konrad M(3), Jones G(1).
Author information:
(1)Department of Biomedical and Molecular Sciences, Queen's University, Kingston, ON, Canada, K7L3N6.
(2)Department of Surgery, Queen's University, Kingston, ON, Canada, K7L3N6.
(3)Department of General Pediatrics, University Children's Hospital, Munster, Germany.
(4)Department of Genetics University Hospital, 14033 CAEN and Caen-Normandie University, Biotargen EA, Caen, France.
(5)Bone Metabolism Unit, Department of Medicine, Creighton University School of Medicine, Omaha, NE, USA.
(6) 東京農工大学大学院工学府生命工学科
(7) 京都大学アイセムス(高等研究院 物質−細胞統合システム拠点)、京都大学化学研究所
J Bone Miner Res. 2021 Apr 15. doi: 10.1002/jbmr.4306. Online ahead of print.
ビタミンD関連高カルシウム血症の遺伝子原因は25-ヒドロキシビタミン D-24-ヒドロキシラーゼCYP24A1遺伝子の突然変異かナトリウム・リン酸共輸送体SLC34A1遺伝子の突然変異として知られていて、1,25 水酸化ビタミンD3ホルモンの活性を亢進することにつながる。しかし、特発性高カルシウム血症の少なくとも20%の原因は不明である。本症例対照研究では、ビタミンD代謝物質の拡張範囲に対する液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法を用いた詳細なビタミンD代謝物質プロファイリングを用いて、ドイツ人とフランス人の高カルシウム血症患者コホート集団のスクリーニングを行い、CYP24A1遺伝子やSLC34A1遺伝子の突然変異は除外して正常な25-OH-D3対24,25-(OH)2 D3比を有するビタミンD代謝の変異を有する患者を特定した。プロファイルをビタミンD過剰症、ウィリアムズ症候群、CYP24A1突然変異によって高カルシウム血症を呈する患者及び25-OH-Dレベル範囲が正常な被験者で比較した。その結果、特発性高カルシウム血症及びウィリアムズ症候群の特定の患者では血清中の23,25,26-(OH)3 D3と25-OH-D3 -26,23-lactoneが正常群に比べて8倍から10倍高い濃度で含まれていることが判明し、同時に1,25-(OH)2 D3 (2-5 pg/mL) が非常に低いこと、1,24,25-(OH)3 D3が亢進していることも判明した。この発見はこれらの患者の高カルシウム血症の根底にある全般的メカニズムとしてのCYP24A1遺伝子を含むビタミンD依存遺伝子群の過剰発現を意味していると我々は理解している。血清中の25-OH-D3と24,25-(OH)2 D3が正常に維持されていることから、この異常なプロファイルがビタミンD過剰症を原因としている可能性を排除し、その代わりにウィリアムズ症候群にみられるウィリアムズ症候群転写因子欠乏の影響と並行する遺伝子が根底にある原因であることを指摘した。さらに、特発性高カルシウム血症の患者の25-OH-Dの濃度を9 ng/mLに下げて経過観察した結果、血清カルシウムとビタミンD代謝物質プロファイルが正常化されたことを観察した。これは症候性特発性高カルシウム血症がビタミンDの栄養状態 に依存していることを示唆している。複雑な症状を有するその他の高カルシウム血症の患者は特異的なビタミンD代謝物質プロファイルを呈していた。我々の研究により、血清ビタミンD代謝物質プロファイリングがビタミンD関連高カルシウム血症の識別診断において重要であることを示し、高価な遺伝子検査を実施することの正当性と適切な治療方法を選択して提供する手助けになることを指摘している。
(2021年4月)
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