大動脈弁上狭窄の重症度を決定する要因としての洞上行大動脈移行部と大動脈輪部の比率



The Sinotubular Junction-to-Aortic Annulus Ratio as a Determinant of Supravalvar Aortic Stenosis Severity.

Gal DB(1), Lechich KM(2), Jensen HK(3), Millett PC(4), Bolin E(5), Daily J(5), Jack JT(4), Stephens S(4), Jensen MO(4), Collins RT(6).
Author information:
(1)The Heart Institute, Cincinnati Children's Hospital Medical Center, Cincinnati, Ohio.
(2)Lucile Packard Children's Hospital, Palo Alto, California.
(3)Department of Surgery.
(4)College of Engineering, University of Arkansas Fayetteville, Arkansas.
(5)Department of Pediatrics; University of Arkansas for Medical Sciences, Little Rock, Arkansas.
(6)Division of Pediatric Cardiology, Stanford University School of Medicine, Stanford, California; Lucile Packard Children's Hospital, Palo Alto, California. Electronic address: tomcollins@stanford.edu.
Am J Cardiol. 2021 Nov 20:S0002-9149(21)01063-8. doi: 10.1016/j.amjcard.2021.10.030. Online ahead of print.

大動脈弁上狭窄の重症度は外科手術の決断などを含む管理方法の指針となる。生理的要因や技術的要因により、ウィリアムズ症候群においてドップラー心エコーや心カテーテル検査を使って大動脈弁上狭窄の重症度を決定することが難しい。我々は大動脈弁上狭窄の重症度を洞上行大動脈移行部と大動脈輪部の比率(STJ:An)を用いて確定できるという仮説を立てた。我々のセンターで大動脈弁上狭窄の治療を行っているウィリアムズ症候群患者の術前心エコー全件をレビューした。洞上行大動脈移行部、大動脈輪部、ドップラー勾配の最大値と平均値を測定し、STJ:Anを計算した。我々は2種類の平均勾配モデルを構築した。モデル1は簡易版ベルヌーイ方程式を用い、モデル2は計算流体力学を用いた。STJ:Anをドップラー勾配および計算流体力学勾配と比較した。カテーテル検査で得られた勾配、波形、解析で求めた勾配の偏差をレビューした。54人の子ども(58%が男児、撮像した時点の中央値年齢は1.2歳、四分位範囲は0.5から3.6、心エコーの中央値年齢は2、四分位範囲は1から4)から得られた168件の心エコーを分析した。大動脈弁上狭窄の最大ドップラー勾配の中央値は24mmHg(四分位範囲は14から46.5)だった。大動脈弁上狭窄の平均ドップラー勾配の中央値は11mmHg(四分位範囲は6から21)だった。STJ:Anの中央値は0.76(四分位範囲は0.63から0.84)だった。モデル1は臨床勾配より低い予測になった。モデル2はすべての重症度範囲においてSTJ:Anと良い相関が得られ、STJ:Anが減少するに伴う圧力回復距離の増大を示した。検査を受けた患者の心カテーテル検査から得られた勾配の潜在的な偏差の中央値は14.5mmHg(四分位範囲は7.5から19.3)だった。ウィリアムズ症候群における大動脈弁上狭窄の重症度は洞上行大動脈移行部と大動脈輪部の比率を用いて正確に評価できる。計算流体力学は大動脈弁上狭窄のすべての重症度において臨床データをよく予測した。洞上行大動脈移行部と大動脈輪部の比率は生理学的な状態とは独立しており、ドップラー心エコーや心カテーテル検査に比べて技術的制限も少ない。洞上行大動脈移行部と大動脈輪部の比率は手術治療の決定ガイドとして伝統的手法の位置づけを高めている。

(2021年12月)



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