対応する対照群と比較したウィリアムズ症候群における術後の急性腎臓損傷
Postoperative Acute Kidney Injury in Williams Syndrome Compared With Matched Controls.
Yokota Rumi(1), Kwiatkowski DM, Journel C, Adamson GT, Zucker E, Suarez G, Lechich KM, Chaudhuri A, Collins RT 2nd.
Author information:
(1)Lucile Packard Children's Hospital Stanford, Palo Alto, CA. Division of Cardiology, Department of Pediatrics, Stanford University School of Medicine, Palo Alto, CA. Department of Radiology, Stanford University School of Medicine, Palo Alto, CA. Division of Nephrology, Department of Pediatrics, Stanford University School of Medicine, Palo Alto, CA.
Pediatr Crit Care Med. 2022 Jan 5. doi: 10.1097/PCC.0000000000002872. Online ahead of print.
目的:循環器所見はウィリアムズ症候群患者の80%以上にみられ、病的あるいは致死的な状態の原因となる。患者の1/3は循環器の手術を必要とする。腎動脈狭窄はウィリアムズ症候群で好発する。ウィリアムズ症候群における循環器関連手術後の急性腎臓損傷の評価を行った研究はない。我々の目的は、ウィリアムズ症候群患者は循環器関連手術後の急性腎臓損傷のリスクが対応する対照群に比べて高いかどうか、そして腎動脈狭窄が循環器関連手術後の急性腎臓損傷に影響を与えているかどうかを評価することである。
研究計画:2010年から2020年にかけて、当センターで循環器手術を受けたウィリアムズ症候群の全患者を対象とした遡及的な研究。ウィリアムズ症候群の対象コホート集団を年齢と性別と体重と術式を一致させた対照群と比較した。
設定:ルシール・パッカードこども病院スタンフォードで循環器手術と術後ケアを受けた患者
患者:ウィリアムズ症候群患者が27人、対照群が43人(女性はそれぞれ31%と42%;P=0.36)。ウィリアムズ症候群の年齢中位数は1.8歳(四分位範囲は0.7歳〜3.8歳)、対照群は1.7歳(四分位範囲は0.8歳〜3.1歳)。
治療介入:
計測と主要な結果:術後72時間における、術後の血行動態、昇圧、入力総容積、利尿投薬、尿量を採取した。臨床検査では8時間おきにデータを収集した。多変量解析を行った結果、循環器関連手術後の急性腎臓損傷の予測因子が明らかになった。腎臓潅流圧と血管作動性変力物質スコアの制御は、対照群と比較して、ウィリアムズ症候群の循環器関連手術後の急性腎臓損傷に関するオッズ比は4.2(95%信頼区間は1.1〜16、P=0.034)、術後9時間から16時間時点で腎臓潅流圧が高いことは、循環器関連手術後の急性腎臓損傷に関するオッズ比(0.88、0.8〜0.96、P=0.004)の低下と関連している。6時間後の血管作動性変力物質スコアが増加していることは、循環器関連手術後の急性腎臓損傷のオッズ比(1.47、1.14〜1.9、P=0.003)の上昇と関連している。年齢が若いほど循環器関連手術後の急性腎臓損傷のオッズ比(1.9、1.13〜3.17、P=0.015)の上昇と関連する。
結論:循環器関連手術後の急性腎臓損傷のオッズ比は対照群と比べて、ウィリアムズ症候群の小児で上昇する。循環器関連手術後の急性腎臓損傷は、術後6時間の時点で血管作動性変力物質スコアと関連する。腎臓潅流圧と平均腎臓脈圧の増加は循環器関連手術後の急性腎臓損傷のオッズの下降と関連する。
訳者注
オッズ比:生命科学の分野において,ある疾患などへの罹りやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度である。オッズ比が1とは,ある疾患への罹りやすさが両群で同じということであり,1より大きいとは,疾患への罹りやすさがある群でより高いことを意味する。逆に,オッズが1より小さいとは,ある群において疾患に罹りにくいことを意味する.例えば,ある多型が疾患群100名中の40名で,対照群100名中の20名で認められたとする。このオッズ比は,(40/60)/(20/80)=2.67となる。これは,ある多型において疾患群で出現するリスクが対照群に対して2.67倍高いこととなる。
(2022年1月)
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