エラスチン、動脈のメカニズムと狭窄



Elastin, arterial mechanics, and stenosis.

Lin CJ(1)(2), Cocciolone AJ(3), Wagenseil JE(4).
Author information:
(1)Department of Cell Biology and Physiology, Washington University, St. Louis, Missouri, United States.
(2)Department of Medicine (Cardiovascular Division), Washington University, St. Louis, Missouri, United States.
(3)Department of Biomedical Engineering, Washington University, St. Louis, Missouri, United States.
(4)Department of Mechanical Engineering and Materials Science, Washington University, St. Louis, Missouri, United States.
Am J Physiol Cell Physiol. 2022 Feb 23. doi: 10.1152/ajpcell.00448.2021. Online ahead of print.

エラスチンは長命の細胞外基質タンパク質であり、弾性繊維を構成することで動脈壁に弾性を与え、心臓周期に合わせた伸展と反跳を可能にしている。平滑筋細胞とともに層状ユニットを構成することで、弾性繊維がメカノバイオロジー的信号伝達を通じて臓器レベルのメカニズムを細胞レベルの変化に変換する。弾性繊維の量や組合構造の変化が動脈の構造や機械的挙動に対して循環器機能に悪影響を与える変化をもたらす。特に、エラスチンタンパク質の量を減少させるエラスチン遺伝子内の遺伝子の突然変異は局所的な動脈狭窄、あるいは動脈内腔の狭小化と関連しており、ウィリアムズ症候群における大動脈狭窄などにみられる。マウスにおいてエラスチンレベルを全体的に減少させることで、臓器レベルや細胞レベルの動脈メカニズムの変化や、狭窄形成に影響を与えている可能性がある平滑筋細胞の表現型の関連変化を探索することできる。ELNアレルをloxP配列で挟んだfloxedマウスによって減少したエラスチン量が細胞のタイプや発達起源特有のメカノバイオロジー的影響に焦点を当てる。マウスの循環器の異なる部分で弾性層を形成する特定の細胞タイプでエラスチン生成が必要になる。上行大動脈内にある異なる発達発生源から得られた平滑筋におけるエラスチンの欠失は血管の狭窄や新生内膜の特徴的なパターンを引き起こす。局所的エラスチン欠乏に関連するメカノバイオロジー的信号伝達の分断と、それによって引き起こされる平滑筋細胞の反応はエラスチン関連疾患に対する新たな治療的介入を開発する手助けになる可能性がある。

(2022年2月)



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