ウィリアムズ症候群の子どもにおける致命的心機能不全



Fatal cardiac dysfunction in a child with Williams syndrome.

川合 千裕 1, 近藤 秀仁 2, 宮尾 昌 3, 砂田 真理子 2,小澤 誠一郎 2, 小谷 泰一 4, 南 博蔵 1, 長井秀樹 1, 阿比留 仁 1, 山本 憲 5, 玉木 敬二 1, 西谷 陽子 1
(1)京都大学大学院医学研究科法医学講座
(2)京都第一赤十字病院小児科
(3)京都大学大学院医学研究科法医学講座 : miyaom@fp.med.kyoto-u.ac.jp.
(4)三重大学医学系研究科生命医科学専攻基礎医学系講座
(5)京都大学大学院医学研究科医学教育学
Leg Med (Tokyo). 2023 Dec 26;67:102387. doi: 10.1016/j.legalmed.2023.102387. Online ahead of print.

ウィリアムズ症候群は染色体7q11.23における微小欠失を原因とする希少遺伝子疾患である。ウィリアムズ症候群患者の死亡率は非常に高いとは言えないが、心臓突然死は特に冠動脈狭窄を合併する場合に起こる可能性がある。大動脈弁上狭窄症と末梢性肺動脈狭窄症を有する生後3か月の女性の乳児がベッドの中で意識不明になっているところを母親が発見した。直ちに彼女を救急病院に搬送し、複数の救急蘇生法を試みたが救命しえなかった。DNAのマイクロアレイ分析を行った結果7q11.23と16p11.2の部位に微小欠失が明らかになり、ウィリアムズ症候群と予想外の16p11.2欠失症候群が明らかになった。後者は神経発達疾患に関連していることが知られている。死亡後に実施したCT画像検査によって、極度に肥大した心臓が明らかになり、心機能不全を示していた。外部身体検査の結果、身長と体重が中程度から重度の発達遅滞を示していた。解剖検査によって、心臓は白っぽく変色した病変、組織学的な線維化変化と冠動脈と大動脈の内膜肥厚が明らかになった。脳には海馬の歯状回に奇形が認められた。合わせて考えると、これらの所見は死因がウィリアムズ症候群による心機能不全であることを示唆している。加えて、16p11.2欠失症候群と歯状回の奇形も彼女の死に影響していた可能性がある。さらなる検死解剖研究を行うことで、突然死における染色体欠失症候群の正確な影響を明らかにし、子どもたちの「避けられる死」を将来確実に減らすことができる。

(2023年12月)



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