成人患者の大動脈弁上狭窄症に対するパッチ大動脈形成術:症例報告
Patch aortoplasty for supravalvular aortic stenosis in an adult patient: A case report.
新井 智仁1)、高橋賢一朗2)、田畑美弥子2)、早川美奈子2)
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1)大和成和病院心臓血管外科、電子メールアドレス:akihito.arai.kameda@gmail.com
2)大和成和病院心臓血管外科
Int J Surg Case Rep. 2024 Mar 7;117:109481. doi: 10.1016/j.ijscr.2024.109481. Online ahead of print.
はじめに:大動脈弁上狭窄症は洞上行大動脈移行部において大動脈中膜の内膜肥厚を原因とする稀な先天的異常である。本疾患の先天的性質により、通常患者は子どもの頃から症状が現れる。
症例の症状:中年になって症候性大動脈弁上狭窄症を発症させた48歳の男性である。ウシの心膜パッチを用いたパッチ大動脈形成術を実施した。彼の術後経過は平穏であり、心エコーを行ったところ、ピーク流速と血圧勾配が有意に低下した。
考察:出生20,000人に1例の割合で発生する大動脈弁上狭窄症は、ウィリアムズ症候群と関連していることが多いが個発例もある。単独大動脈弁上狭窄症は一般的に重症度が低く、子どものころには症状がでない。その狭窄は成長とともにしばしば安定化するが、本症例の中年患者は人生の後半になって兆候が現れた。大動脈弁上狭窄症はバルサルバ洞の上部における分離肥厚か上行大動脈に沿った広汎性狭窄として現れる。通常は、様々なパッチ技法を用いた皮弁形成術による外科的救済治療が行われる。本患者は分離狭窄があったが大動脈弁の機能は無傷であったため、単パッチ拡張を実施した。本術式でキーとなるのは、冠動脈狭窄を起こさないことであり、冠動脈開口部の位置やその他の循環器系異常に気を配ることが必要である。出血コントロールがしやすいことからウシの心膜パッチを選択した。
結論:中年になってから大動脈弁上狭窄症を進行させることは非常に稀であるが、詳細かつよく考慮して選択した術式を用いることで成功裏に救済治療することが可能である。
(2024年3月)
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