エラスチン起因の動脈疾患における両側性拍出血管障害に対する手術



Surgery for bilateral outflow tract obstruction in elastin arteriopathy.

Stamm C, Friehs I, Moran AM, Zurakowski D, Bacha E, Mayer JE, Jonas RA, Del Nido PJ
Departments of Cardiac Surgery, Cardiology, and Biostatistics,
Children's Hospital Boston, Harvard Medical School, Boston, Mass.
J Thorac Cardiovasc Surg 2000 Oct;120(4):755-763

【目的】
ウィリアムズ症候群やその他のエラスチン起因の動脈疾患患者は大動脈弁上狭窄と同 時に肺動脈狭窄を伴うことが多い。我々は肺動脈狭窄の程度が大動脈弁上狭窄の手術 の予後に与える影響を調査し、重度のエラスチン起因の動脈疾患患者に対する最適な 治療方針の策定に役立てたいと考えた。
【方法】
1960年から1999年の間に、重度の肺動脈狭窄を持つ33人の患者が大動脈弁上狭窄治 療のための手術を受けた。過去の既往歴に遡って、患者のカルテを調べ、現在の経過 観察状況を調査し、予後と再手術のリスク要素を特定した。
【結果】
中程度の右側障害(肺動脈Zスコア(pulmonary artery Z-scores)と右心室/下行大動 脈血圧比(ventricular/descending aortic pressure ratio)で確認)の患者15人が大 動脈弁上狭窄だけの手術を受けた。18人はさらに重度の右側障害を持ち、大動脈弁上 狭窄の手術に加えて、肺動脈狭窄あるいは右心室拍出血管障害の緩和手術も受けた。8 人の患者は手術に先だってバルーンによる肺動脈狭窄拡張手術を受けた。我々の病院 では6人が早期に死亡し、1人がかなりの時間が経過した後死亡した。10-20年生存率 は76%(70%信頼区間は68%-84%)、再手術を受けていない比率は、10年後で59%(70%信 頼区間は46%-71%)、20年後で49%(70%信頼区間は35%-62%)だった。多変数解析の結果、 右心室/下行大動脈血圧比が1.0以上の患者は再手術のリスクが高いが死亡する確率 は変わらなかった。
【結論】
エラスチン起因の肺動脈障害に対する外科手術は症状を緩和するが、末梢肺動脈のバ ルーン拡張手術を併用することでエラスチン起因の重度動脈疾患の患者に対する長期 生存を可能にする。
(2000年10月)



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