ウィリアムズ症候群患者における右側感染性心内膜炎:成人の疾患特異的病態生理学を認識することの重要性
Right-Sided Infectious Endocarditis in the Patient With Williams Syndrome: Importance of Recognizing Disease-Specific Pathophysiology in Adults.
中野 智1,齋木 宏文1,齋藤 寛治1,佐藤 啓1,滝沢友里恵1,桒田 聖子1,小山耕太郎1 2
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1 岩手医科大学小児科学講座先天性心疾患・小児循環器疾患診療グループ
2 みちのく療育園メディカルセンター
Cureus. 2025 Jun 12;17(6):e85871.doi: 10.7759/cureus.85871. eCollection 2025 Jun.
ウィリアムズ症候群患者の感染性心内膜炎は通常、左側の心臓病変に関連しており、右側の心内膜炎はめったに観察されない。これは、ウィリアムズ症候群の先天性心臓病変の自然な経過によって説明でき、右側の心臓病変は患者の成長に伴って自然に退縮する可能性がある。我々は、右側感染性心内膜炎と診断された29歳の患者を経験した。彼の診断は以下に述べる改定デューク基準によって支持された。すなわち、グラム陽性病原性口腔内連鎖球菌の一種であるストレプトコッカス・オラリスによる血液培養が2回陽性であるという主要な基準の1つ、先天性心疾患の存在、38.0°Cを超える持続的な発熱、敗血症性肺塞栓症の空間的および時間的播種という3つの非主要な基準によって支持された。彼の大動脈弁上狭窄症は軽度のままであったが、末梢性肺動脈狭窄症は成人期後も進行性であり、これは敗血症性塞栓の偏った分布に基づいた右側感染性心内膜炎の発症に起因する可能性がある。広範囲の虫歯を伴う重篤で進行した齲歯は、知的障害で自覚症状を報告できないため、感染性心内膜炎の発症まで診断されなかった。感染性心内膜炎の治療後に進行した憩室炎の発症は診断が困難であり、この患者の健康管理はより複雑になった。年齢とともに疾患特異的な病態が進行し、成人のウィリアムズ症候群の患者が自覚症状を表出しにくい中、特に自立過程にある成人においては、循環器内科医、腎臓内科医、消化器内科医、歯科医師、心理学者からなる医療チームによる集学的アプローチが必要である。
(2025年6月)
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