蛋白尿を契機に発見されPTRAにより血圧・腎機能が改善・正常化した腎血管性高血圧症の一例



武田 薫、小原 敬一
一関病院 小児科
日本小児科学会 第102回日本小児科学会学術集会

高血圧は内科領域の重要な疾患の一つであるが、小児成人病検診その他で血圧測定の機会 が増加するにつれ、以前に比し高血圧小児の発見が増加しつつあり、小児医にとっても注 目すべき疾患になってきている。小児高血圧症の特徴として、(1)頭痛・全身倦怠感など の非特異的症状が多く又無症状であることも多く血圧測定が唯一の発見法である、(2)二 次性高血圧が多くその8割以上が腎性高血圧(腎実質性高血圧及び腎血管性高血圧)であ る、(3)原疾患の治療により根治可能な例が多い、などが挙げられる。一方、腎実質性高 血圧症では薬物療法が主体であるのに対し,腎血管性高血圧症では狭窄の解除により根治 可能で降圧剤の内服が不要となることが多い反面、発見の遅れにより腎機能の廃絶に至る 危険もある。 腎血管性高血圧症は小児高血圧の約1割を占める疾患で、その原因としては 線維筋性異形成が最も多く、その他稀なものとしてAortitis Syndrome・ Neurofibromatosis・Williams Syndrome・移植・外傷に伴うものなどが報告されている。 従来観血的な血管形成術が施行されてきたが、1978年Gruzigにより報告された PTRA(percutaneous transcatheter renal angioplasty)は、局所麻酔でも可能・反復施行 が可能・侵襲危険性が少ない・入院期間が短いなどの利点から、成人領域では腎血管性高 血圧症のfirst choiceとして確立されている。しかし、本邦小児の腎血管性高血圧症に対 するPTRA施行の報告は、未だ少ない。 今回我々は、低K血症・血漿レニン活性高値・血 漿アルデステロン濃度高値より腎血管性高血圧症を疑い、カプトリル負荷試験・ DSA(digital subtraction angiography)などにより確定診断し、PTRAを施行して、血圧の 良好なコントロールが得られかつ腎機能も急速に改善・正常化が得られた15才女児を経験 した。文献的考察を加えて報告する。

(2000年10月)



目次に戻る