ウィリアムズ症候群における循環器系疾患の性差
Gender differences in cardiovascular disease in Williams syndrome(WS)
Zsolt Urban(1, Laurie S. Sadler(2, Barbara R. Pober(3, Dora Scheiber(4,
Gyorgy Fekete(4, Alok N. Sharma(1, Andrew Grandinetti(1
1:Pacific Biomedical Research Center, University of Hawaii, HI
2:Division of Genetics, Children's Hospital of Buffalo, NY
3:Dept. Genetics and Pediatrics, Yale University School of Medicine, New Haven, CT
4:Dept. Pediatrics, Semmelweis University of Medicine, Budapest, Hungary
"Program and Abstracts" of 8th International Professional Conference On Williams
Syndrome, Page 47.
緒言:
循環器系疾患はウィリアムズ症候群の共通的な症状の一つで、患者の余命を短くする原
因になっている。大動脈弁上狭窄(SVAS)と肺動脈狭窄(PAS)はそれぞれウィリアムズ症候
群患者の60%以下、30%に見られる。ウィリアムズ症候群患者全員に大動脈弁上狭窄や肺
動脈狭窄が発生しない理由は明らかではない。しかし、95%以上の患者でエラスチン遺伝
子欠失という単一染色体不全が見られることから、欠失の大きさの差異は大動脈弁上狭
窄や肺動脈狭窄が全員に発生しない理由ではない。
方法:
コネチカット州ニュー・ヘブン(New Haven, CT)[66]、ニューヨーク州バッファロー
(Buffalo, NY)[33]、ハンガリー[24]、ハワイ[4]などのウィリアムズ症候群クリニ
ックや患者個人から臨床データが集められた([ ]内の数字は患者数を示す)。全患者に
エラスチン遺伝子欠失が認められた。診断時の年齢・成長曲線・循環器系診断結果が記
録された。大動脈弁上狭窄の程度は4段階(なし・経度・中度・重度)に分類された。
結果:
データを統計解析した結果、大動脈弁上狭窄あるいは循環器系疾患全体の症状は女性患
者に比べて男性患者のほうが有意に重い(T検定の結果はそれぞれP<0.002、P<0.001)。
この差は患者の身長・体重・肥満度(BMI : Body Mass Index)・頭囲からは説明できない。
ウィリアムズ症候群と診断された年齢は男性患者のほうが有意に低い(T検定の結果は
P<0.02)。早期診断を受けている原因の一部は、循環器系疾患の発生頻度が高いことと症
状が重いことによる。要因分析の結果からは、男性患者のBMIが低いことが早期診断に
貢献している可能性が示唆された。
結論:
本研究の結果から、性別がエラスチン起因の動脈疾患の発生頻度及び程度に影響を与え
ていることが示された。我々は動脈狭窄の性差は出生前のホルモンの影響に関係してい
るという仮説を立てている。今後の疫学的研究やin vitro(試験管内)における研究によ
って、この症状の性差を発生させる新たな機構が発見される可能性がある。
(2001年3月)
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上記とほぼ同じ内容の論文が下記雑誌に掲載された。
Differences by sex in cardiovascular disease in Williams syndrome.
Sadler LS, Pober BR, Grandinetti A, Scheiber D, Fekete G, Sharma AN, Urban Z.
Division of Genetics, Children's Hospital of Buffalo, New York.
J Pediatr 2001 Dec;139(6):849-853
(2001年12月)
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