ウィリアムズ症候群児の動脈硬化の評価:高血圧の悪化の一因を担っているか?
Evaluation of arterial stiffness in children with Williams syndrome:
Does it play a role in evolving hypertension?
Salaymeh KJ, Banerjee A.
Children's Hospital Medical Center, Cincinnati, Ohio, and the Tufts-New England Medical Center, Boston, Mass.
Am Heart J 2001 Sep;142(3):549-555
背景:
大動脈壁の肥厚に関する病理学的研究と外科的観察の結果、ウィリアムズ症候群患者
の動脈硬化が進んでいることが示唆されている。しかし、ウィリアムズ症候群に関す
る生体内における大動脈を含む動脈の硬化の客観的評価は不足している。さらに、ウ
ィリアムズ症候群の合併症である全身高血圧症の発生メカニズムは解明されていない。
そこで、本研究はウィリアムズ症候群児を対象として、大動脈硬化と拡張性を客観的
な方法で定量化し、高血圧発生における役割をさぐる。
手法:
13人のウィリアムズ症候群児(3〜12歳)と、年齢を一致させた16人の対照群につい
て調査を行った。大動脈硬化は次に述べるbetaインデックスから計算した。
beta = (ln[P(s)/P(d)])/ ([D(s) - D(d)]/D(d))
ここで P(s) と P(d)はそれぞれ収縮期と拡張期の血圧、D(s)とD(d)はそれぞれ収縮期
と拡張期の大動脈径である。動脈拡張性(C)は、面積法(area method)を用いて次の
式で計算する。
C = (A(d) x CO x CL) / (A(t) x [P(es) - P(d)])
ここで A(t)は総面積、A(d)は動脈パルス記録(arterial pulse tracing)における拡
張期部分の面積、COは心臓からの排出量(cardiac output)、CLはサイクル長、P(es)
は収縮期末における大動脈血圧である。
結果:
ウィリアムズ症候群患者のbetaインデックスは対照群に比べて2倍高くなっている
(9.02 +/- 3.15 対 4.43 +/- 0.96, P <.005)。さらに、betaインデックスと全身高血
圧症との間に強い正の相関が見られる(r = 0.8 and P <.0001)。拡張性は42%減少(0.41
+/- 0.11 対 0.71 +/- 0.10 mL/mm Hg, P <.05)しており、動脈の拡張性低下を示唆し
ている。
結論:
我々の研究によれば、ウィリアムズ症候群患者の生体内における動脈硬化が進行して
いることが示唆される。動脈硬化の悪化がウィリアムズ症候群における全身高血圧の
素因となると推測される。
(2001年9月)
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