感染性大動脈瘤に対する凍結保存同種大動脈を用いたin-situ再建の経験
寺崎 貴光、荻野 均、湊谷 謙司、佐々木 啓明、張 益商、庭屋 和男、八木原 俊克、北村 惣一郎
国立循環器病センター
日本血管外科学会雑誌 抄録号(Vol.12 No.3 2003)
第31回 日本血管外科学会総会(7/10,11)
【目的】
感染性大動脈瘤に対する凍結保存同種大動脈(ホモグラフト)を用いたin-situ再建の成績を報告する.
【対象】
対象は2000年から2002年の 4 例.
症例1;17歳,男性.Williams症候群+大動脈弁上狭窄に対する経皮的弁形成術の病歴あり.発熱と心不全で発症.血培からStreptococcus sanguisを検出.CT上,上行大動脈に多発性の仮性瘤を認め,心エコーで上行から弓部大動脈内に多数のvegetationを認め感染瘤と診断.準緊急下にホモグラフト(大動脈基部から弓部)を用いた基部─弓部再建を施行.同時に僧帽弁閉鎖不全に対し機械弁による僧帽弁置換を施行.
症例2;59歳,男性.精巣上体炎を契機に発熱と腰背部痛が出現.CT上,胸腹部大動脈瘤(IV型),腹部大動脈瘤,左外腸骨動脈瘤を認め,Gaシンチで同部に集積がみられ感染瘤と診断.血培からStaphylococcus hominisを検出.準緊急下にホモグラフト(下行大動脈)を用いたin-situ胸腹部大動脈再建およびePTFEグラフトによる腹部大動脈─左腸骨動脈再建を施行.大網充填を追加した.
症例3;85歳,男性.発熱と背部痛で発症.CTで下行大動脈に嚢状瘤を認め,同部の痛みが激しく感染瘤の切迫破裂と診断.準緊急下にホモグラフト(下行大動脈)を用いた下行大動脈置換を施行.摘出瘤壁からSalmonella enteritidisを検出.
症例4;64歳,男性.肺炎のため入院中に嚢状下行大動脈瘤が判明.増大傾向と血培よりPseudomonas maltophilia+acidovoransを検出.一ヶ月の抗生剤治療を行い,ホモグラフト(下行大動脈)による下行大動脈置換を施行.全例に抗生剤による後療法を追加した.
【結果】
症例 1 は一ヶ月後に感染性脳動脈瘤の破裂を来たし,症例 3 は対麻痺を合併したが,全て耐術生存し現在まで順調に経過している.【結語】感染性大動脈瘤に対するホモグラフトを用いたin-situ再建は有用な外科治療手段と考える.
(2005年6月)
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