Williams症候群に伴う頚部動脈狭窄に対する頚部分枝一本化法



Unifocalization of the neck arteries combined with aortic arch replacement for Williams syndrome

山田 義明、山岸 正明、春藤 啓介、岡野 高久、林田 恭子、新川 武史、北村 信夫
京都府立医科大学小児心臓血管外科
J Thorac Cardiovasc Surg 2002;123:579-80

ウィリアムズ症候群には様々なタイプの大動脈弁上狭窄(SVAS)や動脈や頚部動脈分枝の変形が合併する。SVASに対してはいくつかの手術法選択肢の報告があるが、びまんタイプのSVASを軽減することは困難である。我々はウィリアムズ症候群に対する頚部分枝一本化法と大動脈直結置換を用いた代替手術法を報告する。

臨床概要

妖精様顔貌は呈するが精神遅滞ではない16歳の男児が手術を受ける目的で当院を受診した。8歳のときにSVASと診断された。入院時には収縮期心雑音(murmur and bruit)が両頚部に認められた。トレッドミル負荷テスト中に測定した心電図によれば左心室の肥大と虚血性変化がみられた。心エコーによって大動脈弁は適格で大動脈輪の直径は22mmだった。心臓カテーテルを行い、上行大動脈が横行弓(transverse arch)と分かれる部分に複数個所のびまん性狭窄が見られ、右腕頭動脈と左総頚動脈の開口部が狭くなっている。左心室と上行大動脈の間の圧較差は60mmHgだった。抹消肺動脈狭窄は認められなかった。徴候はなかったものの、左心室圧の過負荷があることから手術が計画された。

胸骨正中切開によって手術を行った。所見では大動脈と頚部動脈に狭い部分は認められなかった。各頚部動脈はできるだけ遠部で切断した。動脈カニューレを左肺動脈レベルの下行大動脈まで直接挿入した。3本の頚部分枝動脈と両大静脈にもカニューレを挿入した。選択的脳灌流を伴う動脈軽度低温心肺バイパスを確立した。下行大動脈は左鎖骨下動脈の基部から数センチメートル遠位でクランプした。頚部動脈は止血帯つきのテフロンテープで圧迫した。薬によって心停止させ、下行大動脈を分割した。大動脈壁の内膜層は顕著に肥厚していた。sinotubular junctionに対して十分な余裕を持って肥厚した大動脈壁をバルサルバ洞から切り離した。大動脈弁は適格であった。Brom法と同様に、各バルサルバ洞に数ミリメートルの軸方向切開を行った。下行大動脈、大動脈弓、頚部動脈基部の変性した肥厚血管壁は完全に切除された。20mmのダクロン移植片(Hemashield; Meadox Medicals, Oakland,NJ)をBrom法に従って上行大動脈の近位断端に吻合した。頚部動脈の断端に軸方向の切り込みを入れた後、隣接する頚部動脈を隣り合う順番に合成吸収性縫合糸(polydioxanone、PDS U;Ethicon, Inc Somerville, MJ)を使って吻合した。ダクロン移植片の遠位と一本化された頚部動脈の開口部と動脈弓の遠位の両端部の吻合を行った。術後経過は順調だった。術後に撮った螺旋CTスキャンによる三次元画像によって、どの血管にも狭窄が残っていないことが確認された。

(2005年12月)



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