肺高血圧を合併したWilliams症候群の1例
金子 正英、蓮 桃子、鳥羽 恵美、三平 元、仲本 雅哉、野間 清司
東京都八王子小児病院内科
日本小児循環器学会雑誌 第19巻 第3号、372ページ(2003年5月)
Williams症候群の心合併症としては大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄が典型的である。今回、われわれは肺高血圧を合併したWilliams症候群の1症例を経験したので報告する。
【症例】
10歳男児(2003年2月現在):4歳児に精神発達遅滞、心雑音にて当院紹介受診。特異顔貌呈しており、胸部レントゲンではCTR46%、心電図上右軸偏位、右室肥大あり、超音波検査にて大動脈弁上狭窄認めた。Williams症候群疑われ、染色体検査にて7q11.23欠失認めと確定診断された。精査目的で心臓カテーテル検査施行。右室圧98/3mmHg、主肺動脈98/15(平均血圧55)、右肺動脈84/57(65)、左肺動脈63/23(41)、左室圧121/11、下行大動脈113/79(96)、肺血管抵抗(Rp)14.4単位と肺高血圧症、末梢性肺動脈狭窄を認め、カプトリル内服開始したが、咳にて中止となり、利尿剤にて外来経過観察された。10歳時再検目的で心臓カテーテル検査施行。右室圧77/3、主肺動脈71/22(43)、右肺動脈71/23(43)、左肺動脈61/21(37)、左室圧103/13、下行大動脈104/69(85)、Rp 12単位であり、100%酸素負荷試験行うも、肺動脈圧に変化はなかった。血管造影では、末梢肺動脈の枯れ枝状変化を認め、経口プロスタグラディン製剤の内服開始とした。
【考察】
Williams症候群では、elastin遺伝子の部分欠損伴い、特に大動脈弁上狭窄との関係が明らかにされている、他に末梢性肺動脈狭窄、腎動脈狭窄、体高血圧を合併することもあり、elastinの異常による全身性の血管病変と考えられる。本症例は、その新しい一病態である可能性が考えられた。
(2006年5月)
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