Williams症候群、大動脈弁上狭窄に対するMyers手術
秋田 利明 1)、長谷川 広樹 2)、櫻井 寛久 2)、加藤 紀之 2)、櫻井 一 2)、加藤 太一 3)、西川 浩 3)、松島 正氣 3)
名古屋大学医学部附属病院心臓外科 1)
社会保険中京病院心臓血管外科 2)
社会保険中京病院小児循環器科 3)
日本小児循環器学会雑誌 第21巻 第3号、309ページ(2005年5月)
Williams症候群に伴う大動脈弁上狭窄(SAS)に対して、自己大動脈組織のみによる狭窄解除を行うMyers手術を経験したのでvideoにて供覧する。
【症例】
症例は16歳女児。13歳児に大動脈弁前後の圧較差60〜70mmHgあった。さらにSASが進行したため手術となった。狭窄は限局的であったためDotty法ではなく、Myers法にて狭窄解除を予定した
【手術術式】
上行、弓部大動脈を十分剥離受動し、弓部前面に送血管を挿入し人工心肺を確立した。腕頭動脈直前で大動脈遮断を行い、初回は順向性、以降逆行性に心筋保護を行った。狭窄部直上で大動脈を遮断した。まず、無冠尖のValsalva洞中央を切開した。右冠動脈口はValsalva洞の中央に位置していたので、左右冠尖の交連部と右冠動脈の間を切り込んだ。左冠動脈口が無冠尖との交連部に近く、弁上狭窄の肥厚内膜が左冠動脈口に覆いかぶさっていた。肥厚内膜を切除し、左冠動脈口を回り込んでValsalva洞に浅く切り込んだ。狭窄部が大きく開き大動脈弁がよく観察された。大動脈弁は16mmのサイザーが通過した(正常径14.5mm)。各交連部に一致するように遠位の上行大動脈を切り込んだ。大動脈吻合は4-0 PDS-IIを用い、大動脈切開部の山と谷が合うように吻合した。大動脈遮断時間83分、人工心肺時間131分、無輸血手術で終了した。術後の心臓カテーテル検査ではLV 140/EDP 13、Ao 140/68と圧較差消失し、大動脈造影でも狭窄なく、ARI°だった。
【考察】
SASに対する術式として人工血管あるいは異種心膜を用い無・右冠尖に切り込むDotty法があるが、左冠尖上の狭窄が残り人工物を使用するため成長が望めないなどの欠点がある。各Valsalva洞を心膜で拡大するBrom法は狭窄を均等に解除できるが、成長の点で不利である。Myers法は自己大動脈組織だけでValsalva洞を拡大でき成長を期待できるため、狭窄部の限局した小児症例では極めて有用な術式と考えられた。
(2006年5月)
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