頸部分枝狭窄を含む広汎な大動脈狭窄を伴うWilliams症候群に対するoverturn approachによる一期的大動脈全拡大術
3−3−45、3−3−71と同じ手術に関する報告と思われます。
(2006年5月)
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宮崎 隆子 1)、山岸 正明 1)、春藤 啓介1)、松下 努 1)、藤原 克次 1)、新川 武史1)、吉田 聡美 1)、渡辺 太治 1)、北村 信夫1)、濱岡 建城 2)
京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児心臓血管外科 1)
京都府立医科大学附属小児疾患研究施設内科部門 2)
日本小児循環器学会雑誌 第19巻 第3号、301ページ(2003年5月)
【目的】
上行大動脈(AAo)弁上部から胸部下行大動脈(DAo)に至る広汎な大動脈狭窄病変と頸部分枝狭窄を合併したWilliams症候群に対して心臓を左方に脱転するoverturn approachによる一期的根治術(homograft利用)を施行した。本術式をビデオにて供覧する。
【症例】
10ヵ月男児。7,400g。AAoからDAoにかけて広範囲に強度のびまん性狭窄を呈し、頸部分枝起始部の狭窄も認めた。左室-AAo圧較差100mmHg。
【手術】
国立循環器病センター組織保存バンクより供給されたaortic homograftを切断し、AAo再建用とDAo再建用に分割。胸骨正中切開。送血管はAAo、横隔膜上DAo、腕頭動脈、左総頸動脈にそれぞれ挿入。SVC、IVC脱血にて対外循環開始。頸部分枝起始部の肥厚動脈壁を完全に切除後、健常壁を縦切開し頸部分枝の側々吻合(uniforcalization)を行い近位断端を統合。この断端にAAo再建用homograft遠位端を端々吻合。ついでAAo遮断。心停止下に、狭窄した大動脈弓部を切除。SVC、IVCを右房接合部手前で切断。右PA切断・右肺静脈流入部を含む左房壁を切断後、心臓を左方に翻転し後縦壁への視野を確保(overturn approach)。横隔膜直上部までびまん性に狭窄したDAo上壁を縦切開。この切開部位にDAo再建用homograftによるpatchを縫着。肋間動脈はすべて温存。左房壁縫合後、心翻転解除。AAoを弁上部にて切断し、断端をBrom法に準じて拡大。この断端にAAo再建用homograft近位端を端々吻合。ついでDAo再建用homograft近位端をAAo再建用homograftの左後側面に端側吻合し大動脈弓部を再建。最後に切断した右肺動脈、SVC、IVCをそれぞれ再建。
【結果】
術後MRIでは大動脈は良好に拡大再建され、頸部分枝の遺残狭窄は認めなかった。
【考察】
Williams症候群に伴うびまん性大動脈狭窄に対するoverturn approachによる一期的大動脈再建術は有用である。また頸部分枝狭窄病変に対するuniforcalizationにより分枝付人工血管の使用を回避できる。
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