ミルノリンを含む多剤併用療法による心不全の治療経験



木口 久子、蒲田 政博、木村 健秀
広島市立広島市民病院小児循環器科
小児科 第44巻、第13号、2145-2150ページ(2003年)

はじめに

心不全とは心臓が体の代謝に必要な血液量を駆出できない状態を示す。原因として数多くの病態があげられるが、そのうち心筋炎は感染、毒物、もしくは自己免疫により惹起される心臓の急性炎症を示し、ウイルス感染によることが多い。治療の主眼は心負荷の軽減と心拍出量の維持であり、心筋症と共通部分が少なくない。

われわれは過去2年間に心筋炎・心筋症と考えられる4症例にミルノリンを含む多剤併用療法を行い、良好な結果を得たので、新機能の推移を中心に報告する。

【 略 】

症例3  23歳、男性、Williams症候群

僧帽弁逆流を伴い幼少時より経過観察されていた。従来LVEDDは約130%大、EFは70%前後で推移していた。気管支炎罹患後に心不全症状が増悪、起座呼吸が出現した。紹介医において抗生剤、利尿剤とDOBが投与され、3日後に当科転院となった。X線上CTR 0.67で肺血管造影は増強、心エコー検査では高度の僧帽弁逆流を認め、LVEDD140%大、EF25%であった。ミルノリン、カルペリチド、利尿剤の静注、エナラプリル内服を開始、翌日ミルノリンを増量した。

その結果、入院6日目にはCTR 0.63と縮小、心エコー検査でも僧帽弁逆流は軽減、LVEDD122%大、EF48%となった。13日目に心臓カテーテル検査を行った後、心不全症状が一時悪化したが、カルペジロール内服を併用し症状は改善していった。ミルノリン、カルペリチド、は22日目に中止したが、EFは42%まで回復、30日目に独歩退院となった。入院時96.2pg/mlであったBNPは、退院時174pg/mlであった。

(2006年11月)



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