Williams症候群における脳心血管合併症の発症リスクに関する検討
― 包括的遺伝子医療の一環として ―
竹内 大ニ、近藤 千里、古谷 道子、古谷 善幸、中西 敏雄、松岡 瑠美子、中澤 誠
東京女子医科大学循環器小児科、放射線科
日本小児循環器学会雑誌 第22巻 第3号、248ページ(2006年5月)
【背景】
Williams症候群(WS)では突然死の頻度が高く脳心血管合併症の関与が示唆されている。
【目的】
われわれは、WSに対し包括的遺伝子医療を施行しているが、そのなかで脳心血管イベントに関連する考えられる因子について検討する。
【方法】
対象は27名のWS(年齢12歳±7、男:女11:16)。うち7名は複数回のフォローが可能で計46回の検査を施行。各WSに関し、(1)酸化LDLを含めた血清脂質プロファイル、(2)対糖能(OGTT,HOMA-R)、(3)レニン−アルドステロン系(RAA系)、(4)携帯型24時間血圧計(ABPM)、(5)頚動脈エコーでの内中膜厚(IMT)、(6)前腕動脈のflow mediated dilatation(FMD)を測定した。
【成績】
脂質代謝異常としては、15%(4/27)が高コレステロール血症であったが、特に74%(20/27)で高酸化LDL血症を示した。RAA系ではレニンとアルドスロンが30%(8/27)、AT-Iが26%(7/27)で上昇していた。対糖能異常はOGTTにて糖尿病型18%(4/22)、境界型32%(7/22)を示した。またHOMA-Rが77%(7/9)で上昇しており、うち3名はOGTT正常型であった。ABPMでは、平均収縮期血圧が26%(7/27)で年齢、性別、身長で補正した90%タイルを超えていた。IMTは85%(17/20)で肥厚を認めた。複数回のフォローが可能であった7例中3例で食事指導及びVit CとVit E内服の介入を1〜6年間施行したところ、2/3例でIMTの減少FMDの増加を認めたが、無治療およびコンプライアンス不良群4例では改善を認めなかった。
【結論】
WSでは脂質、対糖能異常、RAA系活性の亢進、高血圧、IMT増加および血管内皮機能低下といった脳心血管イベント危険因子を早期より認める。食事療法およびVit CとVit E内服による介入はリスク軽減に有効である可能性がある。
(2006年11月)
目次に戻る