Williams症候群に伴う弁上部大動脈狭窄に対するDoty手術例
小澤 司、塩野 則次、藤井 毅郎、横室 浩樹、渡邉 善則、吉原 克則、小山 信彌、中山 智孝、松裏 裕行、佐地 勉、高梨 吉則
東邦大学医学部外科学講座(大森)心臓血管外科
東邦大学医学部第一小児科
横浜市立大学医学部第一外科
日本小児循環器学会雑誌 第22巻 第3号 399ページ(2006年5月)
今回、Williams症候群に伴う弁上部大動脈狭窄(以下SVAS)と診断された2例(2005年7〜12月)に対して、Doty手術を施行したので報告する。
【症例1】
13歳女児。2歳時に心臓カテーテル検査を施行。Williams症候群に伴うPSと診断され、RVOTR、PA plastyを施行。以後問題なく経過したが、最近、胸痛、易疲労感が出現した。術前心臓超音波にてSVAS、左室−大動脈圧較差70mmHg以上、心臓カテーテルにて砂時計型のSVASを呈し、圧較差は約80mmHg。Doty手術を施行した。術後心臓超音波検査にて左室−大動脈圧較差は15mmHg、13日目で軽快退院。
【症例2】
17歳男児。他院にてWilliams症候群と診断され、当院紹介受診。最近、運動時に座り込む動作があり、心臓超音波にてSVAS、左室−大動脈圧較差は約50mmHg。精神遅滞が認められ、鎮静下にて心臓カテーテルを施行。SVASの圧較差は33mmHg、最狭窄部は8mm、上行大動脈抹消側は23mm、また入院前検査にてPT、aPTTの延長が認められ、type Iのvon Willebrand病と診断された。小児科バックアップのもとDoty手術を施行。止血にやや難渋したが、コンファクトFを投与し止血し得た。術後もaPTT値が40秒以内に維持されるように術後3日目までコンファクトFを投与し、14日目に軽快退院。外来での心臓超音波では左室−大動脈圧較差は3mmHg未満で順調に経過している。
【考察・まとめ】
症例1は、Williams症候群に伴う特徴的な心血管病変の一つであるPSに対してもすでに再建術が施行された再手術例であり、症例2はvon Willebrand病を合併したまれな症例であった。以上、Williams症候群に伴う弁上部大動脈狭窄の2例に対して、two sinus reconstruction、すなわちDoty法を施行して良好な結果を得たので、文献的考察を加えて報告されていただく。
(2006年11月)
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