日本におけるウイリアムス症候群の血中・尿中カルシウム値について
松田 浩一1)、岡崎 伸2)、岡田 眞子23)、富和 清隆23)
1) 京都大学医学科
2) 大阪市立総合医療センター小児神経内科
3) 京都大学大学院医学研究科遺伝カウンセラー
日本小児科学会雑誌 第114巻第2号 191ページ
ウイリアムス症候群(WS)はエラスチン遺伝子(ELN)を含む7番染色体の微細欠失による。高Ca血症の頻度は15%で成長するにつれ改善するとされるが、成因については不明点が多く、食環境の影響も考えられる。日本人WS患者の血清Ca、尿中カルシウム/クレアチニン(U-Ca/Cr)を分析した。
【方法】
対象は05年4月以降に大阪市立総合医療センター、京大病院を受診した小児(3〜16歳36名)、成人(17〜36歳25名)、61名(男36、女25)。WSの診断はFISH法、CaはMXB法、Crは酵素法で測定。検体は午前受診時に採取。Ca、U-Ca/Cr値を一般小児、成人の文献報告値を参考値として比較検討。
【成績】
小児期;血清Ca(9.68±0.32mg/dL;MEAN±SD)は参考値に比べて有意に高い(P<0.01)。基準値(10.2mg/dL)を超える例は4例。U-Ca/Cr(0.098±0.112)は参考値(0.110±0.075)と有意差ないが基準値0.17を超える例が4例あり。
成人期:血清Ca(9.37±0.32mg/dL;MEAN±SD)は参考値と有意差はない。U-Ca/Cr(0.126±0.075)も参考値(0.096±0.060)と有意差がないが0.17を超えるものが4例あった。
【考察】
WSの高Ca血症の原因として腸管でのCa吸収の亢進が想定されているが詳細は不明である。日本人対象の今回の結果は乳児のデータを欠くが欧米とほぼ同様であった。U-Ca/Crの平均は有意差がないが、一部の症例では高値を示していた。ELNに隣接してCa代謝に関与する遺伝子があり、それらの例では欠失している可能性がある。WSの中にはCa代謝の異常を示す群が含まれる可能性があることを念頭に経過観察が必要である。Ca代謝異常の成因と自然歴の解明については症例の蓄積とともに欠失部位との対応が必要である。
(2010年7月)
目次に戻る