紫斑病性腎炎を合併した高血圧を伴うWilliams症候群の1例
鈴木 俊明1)、池住 洋平1)、唐澤 環1)、長谷川 博也1)、2)、大久保 総一郎2)、廣川 徹2)、長谷川 聡1)、内山 聖1)
1) 新潟大学医歯学総合病院 小児科
2) 再生会新潟第二病院 小児科
小児高血圧研究会詩 第6巻 第1号 2009年 45-47ページ
【要旨】
病例は15歳男児。大動脈弁上狭窄と高血圧を伴うWilliams症候群として観察中に、紫斑病性腎炎を発症した。蛋白尿が1年間持続するため腎生検を施行したところ、ISKDC分類でVbの所見と、小葉間動脈に内弾性板の多層化および中膜の軽度肥厚を認めた。ACEI、ARB、ブレドニゾロンの内服を開始し、尿蛋白は半年ほどで陰性化が得られ、血圧も正常範囲にコントロールされている。
これまでWilliams症候群の患者で、大血管の組織学的評価は報告されているが、小動脈に関するもの見当たらず、腎生検を行なった報告もない。Williams症候群においては大中動脈のみならず、小動脈を含めた全身の血管変化が生じて、そのコンプライアンス低下が高血圧の発症に関係していると推測された。本例は、もともと高血圧と心血管病発症のリスクが高いWilliams症候群に、CKDを併発した病態であり、腎不全への進行抑制の面でも、心血管病予防の面でも、厳格な血圧管理が重要と考えられる。
略
【症例】
【症例】15歳男児。
【家族歴】兄がEpilepsy
【現病歴】
妊娠経過および出生時に異常はなかったが、幼児期から原因不明の精神発達遅滞を認め、他院で経過観察されていた。新生児・乳児期に高カルシウム血症の既往はなく、高血圧を指摘されることもなかった。14歳時に心雑音を認めたことから心エコー検査を受け、SVASと診断された。眼が腫れぼったく、口唇は厚く突出しており、いわゆる妖精様顔貌も認めることから染色体検査(FISHA法)を受け、Williams症候群と診断された。
14歳の11月、腹痛・血便・紫斑が出現し、血管性紫斑病と診断され、この時に初めて高血圧を指摘された。およそ2週間後に血尿・蛋白尿が出現したため、紫斑病性腎炎として経過観察され、その後抗血小板薬やアルギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)の内服も開始したが改善せず、尿蛋白が持続した。
15歳の11月に高血圧および尿蛋白の精査を目的に当科に入院した。
【入院時所見】
身長158cm、体重58kg、血圧140/78mmHg
血尿・尿検査:(略)
腹部3DCT:明らかな腎動脈の狭窄を認めない。
24時間血圧:昼間平均135/79mmHg、夜間平均144/80mmHg
【入院後経過】
血尿・蛋白尿が1年間持続することから、腎生検を施行した。観察した全ての糸球体にメサンギウム増殖を認め、15%に癒着を認めた。紫斑病性腎炎に矛盾の無い所見で、ISKDC分類でVbと診断した。小葉間動脈は、内弾性板の多層化を認め、中膜は軽度肥厚していた。
ACEIに加え、プレドニゾロン、アンギオテンシン受容体阻害薬(ARB)の内服を開始したところ、尿蛋白はその後半年ほどで陰性化し、現在血圧も正常範囲にコントロールされている。
(2010年11月)
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