腎動脈主幹部狭窄を伴わない腎血管性高血圧患児に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬負荷シンチグラムの評価
松山 健1)、上原 朋子1)、西尾 利之1)、遠海 重裕1)、五月女 友美子1)、中條 綾2)、藁谷 理2)、楊 国昌2)、別所 文雄2)、宮島 智子3)、柳沼 章弘3)、奴田原 紀久雄4)、東原 英二4)、幡谷 浩史5)、本田 雅敬5)
1) 公立福生病院 小児科
2) 杏林大学医学部 小児科
3)国立病院機構災害医療センター 小児科
4)杏林大学医学部 泌尿器科
5)都立清瀬小児病院 腎内科
小児科臨床 第63巻 第8号 2010年 1769-1774ページ
【要旨】
腎動脈主幹部狭窄でない腎血管性高血圧症は症例数も少なく、高感度検査とされるACEI負荷シンチグラムの評価も十分ではない。今回両側Ask-Upmark kidneyの15歳男児例(症例1)およびWilliams症候群の19歳男児例(症例2)に関してその評価を試みた。症例1は12歳の学校検査で軽度蛋白尿を指摘された際著しい高血圧を認めた。血中レニンの高値から腎血管性高血圧が疑われ、血管造影およびCT scanにより両側性腎動脈主幹部が正常な両側Ask-Upmark kidneyと診断された。両腎部分切除術の評価のために15歳時にACEI負荷MAG3を、18歳にはACEI負荷DTPAシンチグラムもいった。症例2は12歳に蛋白尿が判明し、安静により正常化する軽度高血圧と血中レニン高値が判明した。血管造影で腎動脈主幹部は両側全く正常で両側腎内血管は全体に細く不整、組織もJGA肥大が目立つため腎血管性高血圧と考えた。基礎疾患が確定された19歳時にACEI負荷MAG3シンチグラムを行った。症例1では画像上異常部位に対してROIを設定した負荷試験の局所的レノグラムも同時に解析したがMAG3・DTPAとも全く変化が認められなかった。症例2では負荷後両側の明らかな排泄相遅延が判明した。結局症例1では2種類の核種によるACEI負荷シンチグラムでも判断不能であったが、症例2ではMAG3シンチグラムで十分に診断可能であった。異常部位の範囲に影響される可能性があり本症に対する本検査の評価は今回も確立困難であった。
略
【症例】
略
症例2はWilliams症候群の19歳男児で、胎児性仮死のため緊急帝王切開で出生し詳細は不明だが軽度の仮死があった。以後の軽度発達遅滞は出生時の影響と考えられていた。同児は12歳児に蛋白尿が判明し、151/87mmHg程度で安静により速やかに正常化する軽度高血圧および血中レニン高値が判明した。血管造影で腎動脈の主幹部は両側全く正常であったが両側腎内血管は全体に細くチリチリと不整で腎組織でも傍糸球体装置(JGA)の肥大が目立つため抹消型腎血管性高血圧と診断した。腎臓のサイズは両側正常で嚢胞形成もなく先天性心疾患の合併もない。その後FISH法でWilliams症候群と確定診断され19歳時にACEI負荷MAG3シンチグラムを行った。
(2010年12月)
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