低形成/異形成腎を伴わず、透析導入に至ったWilliams 症候群の一例



上原 朋子、松山 健、森川 良行、幡谷 浩史、本田 雅敬
公立福生病院・小児科
日本小児腎不全学会雑誌 30巻(2010年8月)253-254ページ

16歳男児。胎生仮死のため帝王切開で出生し、出生時に頭蓋内出血・痙攣を認め、生後3ヵ月時に軽度肺動脈狭窄と診断されたが自然経過した既往があった。また、幼少期から軽度の精神発達遅滞があった。12歳時の学校検尿で初めて尿蛋白を指摘され、精査で軽度高血圧、高レニン血症が判明し、血管造影で腎内抹消血管の全般的不整を認めた。定期的な経過観察でも中等度の尿蛋白が持続し、腎生検を行ったところ、糸球体基底膜傍糸球体装置の肥大が目立ったが、糸球体自体に病変は認められなかった。ACEI投与を開始したが、その後も蛋白尿が続き、17歳時のACEI負荷MAG3シンチグラムで排泄相の両側遅延を認め、両側腎血管性高血圧の所見であった。2回目の腎生検では糸球体は全般的に硬化が目立ち間質障害が30%と著しかった。同時期に染色体検査が行われ、FISH法でWilliams症候群と診断された。その後の諸検査で膀胱性尿管逆流、腎石灰化、嚢胞形成や高カルシウム血症、尿症は認めなかったが、血清クレアチニン1.3mg/dlと腎機能悪化を来たし、21歳時に血液透析、更に腹膜透析導入となった。

(2010年12月)



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