Williams症候群における過剰肋骨についての検討
佐山 圭子、青木克彦、河野 澄男*、長谷川 史郎*
静岡県立こども病院 放射線科、外科*
日本小児放射線学会雑誌 10(2) 100-101、1994年12月
Williams症候群は精神発達遅滞、特異顔貌、乳児期の特発性高Ca血症、大動脈弁上部狭窄をはじめ、様々な身体的特徴を有する奇形症候群である。我々は、日常診療の胸部X線像の読影に際し、Williams症候群に過剰肋骨が多いことに気付き当院の症例につき検討した。
胸部X線像を検討できた27症例(男性16例、女性11例、1歳0ヵ月−17歳5ヵ月)の内、過剰肋骨は15例55.3%に認められた。過剰肋骨は対称性で長い症例が多く、便宜上、過剰肋骨の先端が鎖骨中線より外側に達する症例を完全型とすると、完全型は12例であった。過剰肋骨の出現率に性別や特定の身体的特徴による影響は認めず、加齢による形態の変化は無かった。腰椎X線像についても検討できた過剰肋骨を持つ7例と、持たない7例合計14例について検討した。過剰肋骨を持つ7例では、5腰椎の症例が5例、4腰椎の症例が2例であった。5腰椎の症例はすべて完全型の過剰肋骨で、4腰椎の症例はすべて不完全型であった。5腰椎の5例の内2例には第5腰椎の仙椎化が認められた。過剰肋骨を持たない症例7例では、正常の椎体の分節を持つ例が5例、仙椎化を認める例が第6腰椎を持つ症例が2例であった。腰椎について検討できた14例中、胸腰椎で数えると過剰椎体は7例(50%)に認められた。過剰肋骨の異常も含めると、胸腰椎の異常は14例中9例(64.3%)に達した。
Williams症候群における過剰肋骨や胸腰椎の異常については、今までに報告がなく、主な成書にも記載がない。原因については不明だが、臨床の場でWilliams症候群が疑われた場合、心大血管の疾患の有無の検索のために撮影される胸部X線像で、肋骨のついても同時に簡単に検索できる。しかも経時的変化がなく客観的所見であることより、Williams症候群の診断の画像上の徴候の一つとして、過剰肋骨や胸腰椎の異常に注目するのは有用と考えられる。
(2006年3月)
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